<生存給付金の積立利率は?>
上野三郎さん(今野さんへのコンサルティングを隣で聞いていた同僚・40歳の男性・昭和38年生まれ・妻帯者・お子様1名・マンション購入済み)の場合


 上野さんは、先にご紹介した今野さんの友人です。当社のコンサルティングが面白いと聞いて、今野さんのコンサルティングに途中の回から同席するようになっていました。
 今野さんへのコンサルティングが終了した時、隣で聞いていた上野さんが自分にもコンサルティングをして欲しいと申し出てきました。上野さんは、今野さんとは逆に、保険料の関係で今は十分な保障に入っていないので、今野さんと同じ商品で(現在と同じくらいの保険料負担で)必要な金額にまで保障額をアップした保険を設計してもらえないかという依頼でした。
 ご家族の保険加入状況は、次の通りでした。

  ご主人:住友生命の定期付き終身保険
    災害死亡保険金:4,000万円
    普通死亡保険金:3,000万円
    入院給付金特約:7,000円
    月払保険料  :15,919円 (うち特約分10,779円)
  奥様 :住友生命の生存給付金付き定期保険
    普通死亡保険金:1,000万円
    入院給付金特約:5,000円
    月払保険料  :12,618円 (うち特約分 3,963円)
  ご家族の保険料合計 月額 28,537円

 今野さんと同じく必要保障額の算定や社会保障の算定を行なった上で、ご主人の死亡保険は、主契約の終身保険部分(500万円、月払保険料 5,140円)を残し、AFLAC社の65歳満了定期保険に遺族生活保障年金特約を240万円付けて設計しました。初年度の死亡保障金額は6,200万円+500万円となり、保険料は月額11,516円(健康体、標準体では12,898円)+5,140円となりました。
 さて、奥様の現在の保険は、満期時には250万円になるという説明で加入した積立型の保険であるということです。毎月12,618円を15年間、合計で約227万円を支払うと医療保障と死亡保障が付いた上に10%(約23万円)も利息が付いてくる。そんな虫の良い商品が本当にあると思いますか? とお尋ねしたところ、上野さんは翌日には住友生命にお電話で確認されました。なるほど契約のしおり・約款には契約後3年経過後から2年毎に生存給付金を支払い、支払った給付金は住友生命で預かった上で6%の複利で運用してゆくと書かれています。支払ったのに預かるとは?契約者には現金を最後まで渡さないという事のようです。6%の複利!本当に? 「・・・但し、経済情勢によってこの金利は変更される場合がある」という注釈がついていました。
 上野さんからの問い合わせに対して住友生命はその場で正しく回答しました。現在の預かり金の運用利率は0.05%ということです。上野さんがごみ箱を蹴って怒ったのも無理がありません。積立利率が6%から順次に下げられて0.05%にまで下がっていることは、何らかの通知はされていたことと思いますが、それがご自分にどういう影響があるのかということを契約者に認識させる表現ではなかったのだと思います。楽しみな250万円が飛び去ってゆき、ご夫婦はこの保険の解約を決断しました。念のため解約時の払戻金額を確認したようですが、15年間の保険期間のうち11年6ヶ月分の保険料174万円を支払って、預かってもらっていた生存給付金と解約返戻金をあわせて約120万円の払戻金ということでした。
 さて、奥様の保険にはお守りのように医療特約が付いています。この契約を怒りに任せて解約してしまうと奥様の医療保障も消えて無くなってしまうこととなります。解約する場合でも、奥様の医療保障の手当てが準備できるまで待つようにとアドバイスしました。結局、奥様の死亡保障についても、ご主人と同じ保険で設計することとなりました。
 定期保険には短期払い込みと呼ばれる「保険料の払込は65歳までアンド死亡保障は95歳まで」というタイプのものがあります。上野家の週末の家族会議では、女性の平均寿命を基準として60歳で払済みアンド85歳まで保障の定期保険を主契約(300万円)として、お子様の年齢が8歳であることから家族生活年金特約は年金支払期間10年(お子様が18歳まで)タイプのもの(年金額120万円)を選択することとなりました。初年度の死亡保障額は1,500万円、保険料は当初10年間は5,847円(健康体、標準体では6,309円)、その後60歳までは3,999円(健康体、標準体では4,125円)となっています。
 それから次に、ご夫婦の医療保障をどうしようかと様々なアプローチを試みました。医療保険には、基本となる定期保険や終身保険に特約として付けるタイプのものと医療保険として単品で販売されているものがあります。原則、当社では、医療保障の継続性が主契約(終身保険や定期保険など)の事故(例えば高度障害)によって終了させられることを防ぐ目的から、医療保障については特約ではなく単品の医療保険をお勧めしています。Alicoの医療保険は内容が充実しています。AXAや損保ジャパンひまわり生命の医療保険にはそれぞれユニークな特徴があります。
 様々な資料を用意して次回のコンサルティングの準備をしていたところ、上野さんから「実は奥様が、ご主人を被保険者とするがん保険(家族型)に加入していた」ということが告げられました。保険料の安いがん保険の場合、自分が加入していることを認識していない方がいることがあります。また、がん保険や郵便局の簡易保険については、保険であることは判っているが「保険として認識していない」という方が多いのも事実です。「入っている生命保険はこれだけですか。」と質問して、「生命保険はそれだけです。それ以外にがん保険と簡易保険にも入っていますが。」という答えが返ってくると、オットット、となってしまいます。
 我々がコンサルティングをする中で保険証券を見せて頂く場合に、最初から「がん保険」と「簡易保険」の保険証券を出してくれる人は少なく、お話が進む中で「それなら入っていますよ」と後出しされるケースが多くあります。がん保険も簡易保険も当初の売り方や加入の経緯に問題があったのだと思いますが、立派な生命保険です。おおむね、2軒に1軒に近い割合で、がん保険や簡易保険に加入しているという経験則を得ています。
 せっかくのこのがん保険を活用しない手はない、ということで、上野さんの知らないうちに奥さんが掛けていたがん保険に、今野さんと同様に特約MAXという医療保障の特約を中途付加し、お子様も含めたご家族全員のがん重点型終身医療保険(お子様は23歳まで)にバージョンアップすることが出来ました。医療保障のために追加となった特約MAXの保険料は9,987円です。
 ご家族全体の契約手続きが完了した後、奥様の契約の解約手続き、ご主人の契約の特約解約手続きを実施して、私達のコンサルティングは終了しました。しかしながら、保険は長期の保障を目的とした商品ですので、今野家と上野家へのコンサルティングは今後も続くこととなります。
 最終的に、ご家族の保険料はご主人11,516円+5,140円、奥様5,847円、ご家族全員の特約MAX9,987円の合計で32,490円となり現在より3,953円増えましたが、保障内容を見直せたこと、今後の保険料が値上がりしないこと、ご夫婦の終身医療保障とお子様の医療保障を準備できたことで、知らなかった保険にいつのまにか入っていたことも夫婦喧嘩の原因とはならずに済んだようです。(なお、この計算には、最初に意識していなかったために保険料の計算に加えていなかったガン保険の主契約は、保険料月額の比較のためあえて記載しておりません。その保険料は2,150円です。)
 保障内容は充実させましたが、保険の目的である入院、手術、死亡などの事故が生じたときに、上野さんの立場で各種の手続きやアドバイスを行なうことが一番大切であると私達は考えています。