<老後の保障・一生の医療保障をどう考えるか−その2>
小佐野五郎さん(60歳、子供も独立)の場合


 小佐野さんは現在60歳。3年前に奥様に先立たれ独身。お子様はお嬢さんが2人。どちらも既に独立した社会人となっておられます。
 「妻もなく、子供は独立しているので家族に金を残す必要はない。相続税がかかるほどの財産もない。家のローンも返済が済んでいるし、お墓も用意してある。お葬式その他、あと始末のために400万円〜500万円位の保険金があれば十分だ。両親ともどちらもガンをやっているので自分もガンの保障だけは十分につけたい。」という小佐野さんが入っている保険は標準的なL字型定期特約付終身保険です。
 7年前の53歳の時にそれまで入っていた契約を転換して入ったもので、終身の保障は230万円。これに定期特約と災害死亡割増特約、傷害特約をつけて、死亡保険金は約3,300万円、災害死亡時の保険金5,000万円の保障となっていました。また災害入院特約・疾病医療特約・成人病特約のそれぞれ入院日額は1日5,000円です。
 保険料月額は34,000円ですが、主契約の終身保険はほとんどが転換により買われたものなので、その部分の保険料は、月払567円。残りはすべて特約の保険料です。
 その主契約の保険料もステップ払い方式といって、最初安く、10年たつと保険料がアップするタイプのものです。ひところ契約当初の保険料を安くするために、元大手日本社を中心に良く利用されたものですが、この契約の場合月払541円が11年目から月払704円になります。何の為にこんな事をするのか理解に苦しみます。
 特約の保険期間は10年ですから、63歳になると保険料は月払約60,000円にはね上がります。
 保険料の払込期間は70歳までですから、ここで定期特約は終了します。その後は80歳までの10年間、災害死亡保険金が1,070万円になります。また入院・手術関係の特約も継続することができますが、そのためには70歳の時点で180万円位の保険料を一度に払う必要があります。
 主契約の終身保険の部分は予定利率の高い時の契約なのでこのまま残し、それで不足する死亡保険金は90歳満了の定期保険でカバーすることにしました。
 医療関係の保障も80歳でなくなってしまう今のものを続けるより、終身保障タイプのものに乗換えることにし、またガンの保障も充実させることにしました。保険料の支払をおさえるために保険料払込期間を終身払いとしてこれら全てを一度にまかなえるよう、AFLACの終身のガン保険に終身の医療特約と90歳までの定期特約を付けたものを提案しました。終身保険や定期保険に医療保障関係の特約をつける、というのが一般的な契約の形態ですが、AFLACの場合、このようにガン保険に定期保険をつける、という契約の仕方があります。
 保険料は90歳まで月払25,000円で変わらず、死亡保障が530万円、医療保障は入院日額1万円、ガンの場合はさらに入院日額1万円が上乗せされます。

 この契約の場合、ここで説明したような今の契約の内容を確認するのにちょっと苦労しました。
 小佐野さんは「保険のことが良くわからないので何を聞いたらよくわからないし、質問でもされたら何を答えたら良いかもわからない、保険会社に契約の内容を確認することもそちらでやってもらいたい。」ということでした。もちろん、そんなことは私たちには簡単なことなので保険会社に問い合わせをしました。質問内容はそれほど難しいものではありません。「今の契約の保険料の、主契約・特約別の内訳はどうなっているか、つぎの更新のときに保険料はいくらになるか、70歳で保険料の払込が終わるとき、医療関係の保障を続けるために払わなくてはならない保険料はいくらか、今契約を解約したら返戻金はいくらになるか、」などです。
 まず電話で問い合わせをしたところ、「契約者本人ですか。」という質問です。「本人ではない。」と答えると、「本人以外には回答できない。」という答えです。ここまでは当然予想の範囲内ですから、「本人の代理で質問しているので、回答してもらいたい、本人の代理であることを証明するにはどうしたら良いかも指示してもらいたい。」と言ったところ、保険会社の回答は、あくまで契約者本人以外には回答できない、の一点張りでした。いよいよ奥の手を使うときです。「それがそちらの会社としての正式な回答ですね。」と念を押したところ、多分上司か誰かに相談したのでしょう、ようやくちゃんとした回答が得られました。「委任状を持ってどこどこに行ってください。そこでお答えします。委任状には契約者が自署して契約者の印鑑(保険の申し込みのときに使ったもの)を押してください。その印鑑と契約者の預金通帳も一緒に持ってきてください。」ということでした。委任状はわかるけれど印鑑や預金通帳が必要なのかな、と思いましたが、とりあえずそこで電話を切りました。
 小佐野さんに委任状をお願いしたところ、委任状は何の問題もなく署名、押印してくれました。印鑑については、自分の実印を使っているのでそれを渡すことはできない、預金通帳も預けられない、という、これまた当然の回答です。委任状と保険証券をお預かりして指定された相談窓口に行ってみました。委任状があったので、契約の内容はかなり詳しく教えてもらうことができました。もちろん、委任状だけで、印鑑を見せろとか、預金通帳を見せろとかいうことはありませんでした。
 この、印鑑とか預金通帳とかは、相談窓口でそのまま契約の解約の手続きになった場合に備えて念のために持ってくるように、ということだったのかもしれません。契約の内容を確認するためだけだったらもともと必要なかったようです。印鑑や預金通帳を預かることができない、という段階であきらめていたら契約の内容を確認する作業はできなかったかもしれません。
 いずれにしても、本人でないとなかなか契約の内容を教えてもらえない、代理人が委任状をもらってもそれ以外にほとんど不可能なような条件をつけてくる、という保険会社の対応では、めんどくさい話は苦手だ、と思っている契約者は困ってしまいます。不満だけれどメンドクサイからそのままにしておく、あるいは思いきって全部解約してしまう、そのどちらかになってしまうのではないでしょうか。
 ちょっと面倒ですが、今の契約の内容を確認するため、必要だったら契約者に代わって保険会社に問い合わせをする、というのも私たちの仕事の一部だと思っています。