<老後のペイオフ対策>
北野弘子さん(82歳女性、子供も独立)の場合


 北野さんは現在82歳。ご主人はもうすでに亡くなり、娘さん・お孫さんと同居しています。
 ご主人が残されたものを銀行に預け、年金とその貯金を崩して生活をしていらっしゃいます。娘さんもお孫さんも働いているので生活費に困ることはないし、現在の家の支払も終わっていて、相続税を払うようなものもないということです。
 「銀行に預けたお金が減るのは困るので、また解禁になるかもしれないペイオフ対策をどうしたら良いかしら。」という相談を受けました。
 今のように利回りが悪い時代に、投信も株も勧められません。銀行に預けておくと今までは減る心配はありませんでしたが、ペイオフが解禁になった時は減る心配も出てきます。それに銀行に預けると言っても、どこの銀行が安全かという心配も出てきました。
 それで、危険分散のためにいくつかの銀行に分けて預けておこうと思っていたお金の一部を生命保険に使ってはどうでしょうと提案してみました。それまで保険というものは、亡くなった時に受取るもの、最近では病気になった時に使える医療保険というもの位の認識しかありませんでした。貯蓄になるという感覚はもう昔のもの、現在は保険会社が潰れたり、新しい保険会社がたくさんあってどこの会社がどういう会社なのかまったくわかりません。
 そこで払い込んだ保険料が減らない、解約返戻金が払込保険料を上回る保険があるという話をしました。ペイオフ対策とは言え、ずっと使わないお金ではありません。この3、4年は手持ちのお金で何とかなりそうですが、それ以後はいつでもすぐに現金化できるようなものにして欲しいとのことでした。それで短期で解約返戻金が払込保険料を上回るものを探しました。
 保険料は被保険者が若いほど安いので、孫の中で一番若い孫を被保険者にしました。予定の1,000万円のうち300万円を手元に残すことにして、残りの700万円を保険料に充てることにし、何年目で解約返戻金が払込保険料よりプラスになるか試算しました。
 1つは保険金100万円のアクサ生命の一時払い終身保険にしました。一時払い保険料は54万円です。これは4年目の解約返戻金が払込み保険料の100.5%になります。4年目以降も、年毎に解約返戻金は増しますが、解約返戻金と払い込んだ保険料との差額があまり大きくならないので、今の税制では解約しても所得税がかからないことを計算しました。この部分は最後まで解約しないつもりの部分です。
 残りは保険金700万円のこちらもアクサ生命の一時払いの10年の養老保険にしました。一時払い保険料は640万円です。これは3年目で解約返戻金が払込み保険料の100.7%になります。3年目以降、年毎に解約返戻金は増し、満期の10年後まで持っていられれば、払込保険料の約640万円が700万円になり、約1割増えます。満期まで契約がそのまま続いた場合には所得税がかかりますが今の税制だったら一時所得の特別控除があるので税金の額はたいしたことはありません。
 これで保険料700万円弱で死亡保険金800万円の保険が買えました。中途で解約してもそれぞれが4年目、3年目を過ぎていれば払込保険料を上回る解約返戻金が得られます。ペイオフのことを心配しながら銀行に預けるという不安が解消されました。
 ご自分がなくなったとき、これらの契約を相続するのに相続のしやすさを考えて一時払い養老保険のほうは契約を二つに分けました。