<更新型保険は更新時の保険料アップに気をつけて>
今野二郎さん(30代後半の男性・昭和39年生まれ・妻帯者・お子様2名・持ち家)の場合


 今野さんが当社に保険の相談に来られたのは、当社の腕試しだったようです。ご本人は現在加入している生命保険の保障内容に相当な自信をお持ちの様子でした。
 ご夫婦で第一生命の定期付き終身保険に加入しており、それぞれに医療保障も特約としてあれこれと付いていました。また、ご主人はこの保険とは別に、がん保険にも加入しています。
 最初のお子様が誕生した6年前、独身時代に加入した契約を転換して現在の第一生命の定期付き終身保険に加入しています。その時点で、保険に関する書物を調べ知人で保険に詳しいと思われる人にも相談し、担当の外務員さんの提案内容にもいろいろと注文をつけ、現在の契約内容に決めたとのことでした。
 さて、現在の保険の内容は次の通りです。
    災害死亡保障  7,500万円
    普通死亡保障  7,000万円
    疾病障害特約   500万円
    災害入院   日額7,000円
    疾病入院   日額7,000円
    成人病特約  日額7,000円
    特定損傷特約    10万円

 なぜ普通死亡が7,000万円なのですか? とお尋ねしたところ、子供のことも考えると3,000万円や5,000万円では不足すると考え、保険料との関係で7,000万円にした、とのお答えでした。具体的に必要保障額を詳しく計算した訳ではないようです。保険料はご主人が26,847円、奥様が9,954円、それにがん保険4,080円で、合計で月額40,881円となっています。
 それでは、当社で行なったコンサルティングの内容を説明しましょう。
 まず、保険料の負担についてです。念のために、今後、65歳の保険期間満了まで、どれくらいの保険料をお支払になるのかご存知でしょうか? と尋ねました。ご本人は、今後に多少の保険料アップがあっても、せいぜい2〜3割ぐらいだろうから何とか支払っていけるというご回答でした。今野さんの保険契約では、主契約の終身保険だけが保険料が一定であり、その他の特約はすべて10年更新型となっています。更新型の特約は原則、更新毎に年齢が高くなってゆくために保険料も高くなってゆきます。
 ご本人に事実を確認してもらうため、第一生命のお客様相談室に電話をして確認してもらいました。この回答を受け取るまでに2ヶ月以上の期間を要したのですが、あまりに不誠実な対応が続いたため、その経緯は最後に記載することとし、この場ではまず結果だけをお伝えしましょう。
 ご主人の契約の、今、毎月の保険料が26,847円のものは、43歳の更新時には43,507円、53歳の更新時には75,444円、63歳の更新時には112,034円の保険料となり、さらに、65歳の主契約保険料の支払完了時に80歳までの医療保障のための保険料として一時金で6,943,981円を支払わなければならないという内容でした。保険料の支払総額はご主人の契約の分だけで2,700万円以上となり、今後支払う保険料も2,500万円を越えてしまう状況でした。本人はもうビックリし、怒りだしてしまい、どうすればいいんでしょう?と当社への電話で戸惑う事態となりました。
 更新型の保険は、「保険料が安くなった」とか「保障が充実した」とのキャッチフレーズで新規販売や契約転換に使われているのですが、長期に渡る契約の全体像を見てみると実は「保険料の総支払金額が高くなっている」、「将来には保険料が高くて払えなくなる」、「保険料が払えないので保障が切れてしまう」という危険な側面を合わせて持っている商品なのです。
 次に、死亡保障がなぜ7,000万円なのか? ご本人にも納得できるように、表計算ソフトで縦軸に年度(西暦XX年)とご家族のそれぞれの年齢、横軸にご主人に万が一の事態が生じた場合に必要なその年の必要生活費、教育費、緊急予備費など記載した表を作成しました。ご主人のご意見では、毎月の最低生活費は25万円、お子さんが高校の3年間は教育費として毎年50万円、大学の4年間は毎年100万円、それぞれのご親戚に病気療養中の方がいらっしゃるため緊急予備費は毎年100万円というように、ご主人が亡くなった場合の毎年の遺族のための必要資金をその目的毎に記入してゆきます。奥様の年齢が65歳になるまでをこの表で作成させたところ、とんでもない数字が算出されてしまいました。なんと累計で必要資金額の総計が1億1,600万円、という数字が弾き出されたのです。自信たっぷりであった今野さんが非常に困った表情となったため、ここで助け舟を出しました。
 現在の日本ではある程度の社会保障が準備されているのです。サラリーマンのご主人を失い小さなお子様を抱えた奥様には、遺族基礎年金や遺族厚生年金が支払われること、末のお子様が18歳を越えた後にも中高齢寡婦加算があることなど、社会保障から得られる保障が今野さんの場合には約4,000万円あることをその表の中に記載してゆきました。最終的に自己責任で準備すべき死亡保障額は7,400万円に落ち着きました。
 このようなコンサルティングを行なってゆく過程で、今野さんは重要なことに気がつきました。今後、死亡保障の必要額は、子供の成長と共に徐々に少なくなってゆくことです。1年過ぎれば、約200万円ぐらいずつ必要額が減少してゆき、ご自身が60歳(末のお子様が22歳)となった後には1,500万円程度で十分になるということです。面倒でも、このような一覧表で具体的に数字にしてみると今まで曖昧に考えていたことが明確に認識できるようになります。
 7,000万円で十分であると考えていた6年前には実は保障が不足していたということ、現在は(たまたま)十分な保障水準にあるということ、今のままで続けると今後は過剰な保障額となってゆくことが本人曰く、「よく理解できました。」
 さて、保険料と保障額の検証が済みました。そこで、生命保険会社複数社の商品で保険設計に取り掛かることとなりました。まず、現役時代の大型死亡保障(但し逓減型)、続いて終身の医療保障ではどうなるのか?念のため、10年定期でシミュレーションしたところ、各社の保険料は驚くほど違っています。現在の第一生命と外資系生保とでは1割以上も保険料に差がありました。また、健康体割引と非喫煙体割引があるAFLAC社での試算では、たばこを吸わない今野さんの場合、この割引を活用することで保険料は3割以上安くなります。
 更に、この会社には定期保険特約の中に、死亡保障を逓減型として保険料を軽減させる商品や契約当初に定めた期日まで遺族生活費を年金で支払う商品(今野さんの場合、65歳までの期間を定め、たとえば40歳で亡くなった場合、40歳から65歳までの期間に毎年290万円の遺族生活年金が支払われる)が用意されています。ご本人がこの家族生活保障年金付き定期保険をご希望されたため、この保険で保険設計を行なった結果、保険料月額11,485円(非喫煙健康体、標準体では14,911円)となりました。現在の第一生命の主契約である終身保険(500万円)部分を継続した場合、その保険料が5,630円かかりますが、合計しても2万円程度で必要な死亡保障が確保できます。また、この保険料は将来も上がることがありません。
 次に終身医療保障です。第一生命では65歳から80歳までの保障のために約700万円の一時金が必要でした。それでも80歳以降の医療保障が無くなってしまいます。ご存知のようにAFLAC社のがん保険には医療特約を付けることで「がん重点型の終身医療保険」にバージョンアップすることができます。がん保険を個人型から家族型に型を変更(+2,430円)し、お子様も含めたご家族全員に医療特約を付ける(+9,831円)ことができます。保険料自体は12,261円上がりますが、保障内容として、奥様とお子様のがん保障および家族全員の医療保障を追加して得られます。
 お子様は人数に関係なく23歳までの保障となりますが、手続きを行なえば、その後のお子様分の保険料は軽減されます。ご夫婦には終身のがん重点保障型医療保障が確保されます。ご主人、奥様、お二人のお子様が別々に医療保険に加入するのに比べて、非常にお得な内容であると判断されました。
 奥様のご希望で、ご主人とは違ったプランを奥様にも設計させて頂きました。主婦については死亡保険金の限度額が3,000万円程度に設定されているため、ご主人と同じ年金型の死亡保障では限度額を越えてしまいます。そこで逓減定期保険特約を付けたプランとして主婦の限度額の範囲内で死亡保障を設計しました。医療保障の特約が不要であることも影響して、月払い保険料は3,972円(非喫煙健康体、標準体では4,940円)で、現在よりも大きな死亡保障が得られています。
 ご家族の保険料は、合計で月4万円を下回り、現在の保険料よりも少し安くなりましたが、お子様の医療保障が追加され、今後の10年毎の信じられないような保険料の高額化と65歳時点での約700万円の一時金の支払がなくなりました。医療保障では終身型を確保することが出来た上に、保険料の支払総額はご夫婦で約1,500万円以上軽減され、それを老後生活の準備資金に回すことが可能となりました。

 保険商品や保険料は、どこに入っても同じという時代ではなくなっています。また、顧客のニーズよりも売る側のニーズを優先して販売(誘導)する会社や外務員さんもまだまだいます。嘘はいわないけれど、本当のことも強く聞かれなければ言わない、出来るだけ綺麗な言葉で相手が勝手に誤解してくれるのを利用するという風潮では、日本の保険会社に未来はないと感じます。

 さて、途中で割愛させて戴いた第一生命のお客様相談室に電話で更新時保険料を問い合わせた時の対応について、その実態を報告させて頂きましょう。お問い合わせの電話をしたのは契約者ご本人(つまり保険の交渉の素人)です。
 電話では、本人確認が行なわれ、最初の更新の際の保険料(43,507円)という回答をしてもらえました。しかしながら、2回目以降の更新保険料については計算が複雑なのでお時間を頂きたいと言われ、回答期日さえも伝えられませんでした。さて、それから1週間もしないうちに今野さんの自宅には第一生命から「保障見直しのおすすめ」という見出しの新しい保険への転換案内が郵送されてきました。更新して保険料が高くなる前に、新しい保険に転換すれば保障が更に充実し、保険料も安くて済みますよ!という内容です。
 今野さんが、その資料を持って当社に解説を依頼されたのは言うまでもありません。ざっと目を通して、重要な事項だけを説明させて頂きました。最初に、今回の目的つまり電話で依頼したのは更新期ごとの新保険料はそれぞれ幾らになっていくか? ということであって、転換の案内を希望したわけではないということ。そのため、再度、同じ内容の質問を行ない回答を得るべきであるということです。次に、この案内の重要な部分は3点あり、どれも資料の端っこに非常に小さな活字で記載されている部分だということです。現在の契約の予定利率が2.90%であり、案内しているプランの予定利率は1.65%であること、そのプランの将来の更新保険料は66,296円であるという3点です。
 今野さんは翌日、第一生命のお客様相談室に再度の電話を行ないました。これまでの経緯を述べ「これが、契約者からの問い合わせに対する第一生命の正式な対応なのですか?」とクレームを伝えたようです。しかしながら、その時にも電話を別の部署に転送され、そこでも回答をもらえず更に1週間の待ち時間を要請され、その後、ご自分から再々度の電話を掛けて、やっと回答を得ることができたという状況でした。回答の内容は先ほど書いたとおりですが、コンピュータを駆使したシステムで契約を管理している大手の保険会社で、更新後の保険料を調べるのに2ヶ月も時間が掛かるというのはいかにも不思議なことです。
 念のため、今野さんの現在の第一生命の終身保険は、予定利率が5%程度であった時期の契約を6年前に2.9%の新商品に契約転換したものでした。今野さんは、そこでも損をしていたのかも知れないと考えています。