<月刊『現代』4月号のために用意した、頭の部分の原稿>

 イラクに対する戦争・北朝鮮の核問題がクライマックスに向かう中、いよいよ金融機関各社の年度末である3月末に向かい、金融業界を取り巻く動きは慌しさを一層募らせている。
 大手都銀はなりふり構わぬ自己資本の増強策に狂奔し、外資に資金援助を要請して自分自身を安く身売りしようとしたり、子会社に自ら吸収される形で形式的な自己資本のかさ上げを図ったり、国が一旦救済した銀行を買収しようとしたりしている。
 自己資本の増強と、融資先企業の更なる破綻処理や株安による自己資本の減少と、どちらが早いかデッドヒートの競争だ。大手の銀行にはいよいよという時、公的資金投入という奥の手がある。このような動きは何とかしてその公的資金搬入を避けたいという大手年銀行経営陣の最後のあがきだ。
 ところで同じように大きな問題を抱えながら、一切の公的資金から見放され、なすすべもなく立ちつくしている金融業界がある。生保、バブル全盛期に世界に冠たる「ザ・セイホ」と呼ばれた生保業界である。
 バブル崩壊後、1997年の日産生命を皮切りに東邦生命・第百生命・大正生命・千代田生命・協栄生命・東京生命と続く生保破綻。銀行の場合にならって生保の破綻処理にも公的資金が使われていると思っている人もいるかも知れない。残念ながらそれは違う。
 銀行の救済のためにはもう何十兆円もの公的資金が投入され、その上必要に応じ、さらにもう何十兆円もの資金がいつでも使えるように用意されている。生保にはバブル崩壊後今まで、公的資金は1円たりと投入されていない。
 公的資金の投入には、損失を補填するため(赤字の穴埋めをするため)の、使ってしまったらもう返ってこない性格のものと、一時的な資金繰りのための資金でうまく行ったら返ってくるものと、その両者がある。銀行のために使われた公的資金のうち、どれ位がもう返って来ない金で、どれ位が返ってくるかも知れない金なのか、あまりはっきりとはわからない。はっきりしているのは、生保業界に対してはそのどちらもゼロだということだ。
 生保会社が破綻した時、その破綻処理をするための契約者保護機構に公的資金枠というのが4,000億円ある。これが公的資金の投入と誤解されることもあるが、これは文字通り単なる「枠」であり、『見せ金』でしかない。必要になったらそれだけの金額の公的資金が「使える」ということではなく、「使えるかもしれない。ただしそれには、国会の承認が必要だ」という性格のものだ。金融機関の救済に対して公的資金を投入することに賛否両論ある中で、このような『見せ金』が実際に必要になった時(即ち実際に生保会社が破綻した時)、すんなりと国会議員がその公的資金投入(この場合は上記の返って来ない方の公的資金投入だ)をすんなり承認することはあまりありそうではない。企業の破綻処理というのはある意味時間との勝負で、時間をかければかけるほど事態はどんどん悪くなり、処理コストもどんどんふくらむ。コスト意識がない役人や国会議員に任せておいたらいつ結論が出るかわからない。となったら、本気で破綻処理をしなければならない立場の人間にとって、その金はないものと同じでしかない。その意味でこの公的資金枠は『見せ金』でしかない。(ニセ金なら多少は使い方があるが、見せ金ではそれが見せ金とわかった途端、何の使いでもなくなってしまう。この見せ金も実はこの3月末でなくなってしまう。それをもう3年延長してあと3年間、4,000億円の見せ金を続けるための法律改正案が、今の国会に提出される予定になっている。)
 生保会社は上記、破綻してしまった7社の他に、何とか破綻する前に他社に買収され、少なくとも当面は破綻を免れた会社がいくつもある。
 そして今、これらに続く破綻待ち会社として、さらにいくつかの会社の名前がさかんに取り沙汰されている。これらの会社はひと昔前のいわゆる大手生保と言われた7社のうちの一部であり、今までに破綻した会社と比べても規模的にはるかに大きく、破綻処理に必要なコストもそれだけ巨額になることが予想される。そのコストを負担するのは、その保険会社の契約者、その保険会社に金を貸している銀行、そして破綻処理に伴う契約者保護機構からの資金援助という形で、間接的にではあるが他の全ての生命保険会社の契約者ということになる。
 そのコストがあまりに大きく、特に銀行のコスト負担が銀行自体の経営に与える影響も大きいことから、これらの会社は破綻処理に移行することもできず、棚ざらしのような状況に置かれている。(一般の企業はたとえ儲かっていても資金が回らなくなると倒産ということになる。生保会社は資産だけはたっぷり持っているので、最終的な取りつけ騒ぎのようなことにならない限り、実質的に破綻していてもお金は回るし、生き続けることができる。)
 このような状況を少しでも改善し、あるいは最終的な破綻処理コストを何段階かに分けてなし崩しに少しずつ負担していくために、既契約に対する予定利率の引下げという議論が急激に現実味を帯びて再浮上している。
 この予定利率の引下げという議論は、少なくともその会社が相互会社である限り、本来的には契約者の当然の権利(義務ではない)として認められるべきものだが、現在行われている議論はこれを換骨奪胎し、破綻処理の前処理、あるいは新しい形の破綻処理として利用しようというもので、これがどのように決着がつくか注意深く見守る必要があるだろう。上記の破綻待ちの会社が今後どのように処理されるのかされないのか、そのタイミングも含め役所の行動、それに対する生保各社の対応について注目していきたい。

 そのような中、実は実質的な予定利率の引下げはすでにもう何年も前から始まっている。即ち、契約の乗換え・転換である。バブル期の生命保険の予定利率が6%を上回る時代から今の1%台の時代まで、予定利率は一貫して下がり続けている。予定利率の下げは他の条件が同じであれば、当然保険料の引上げを伴う。にも拘わらず、生保の営業マンは一貫して「保険料が安くなりました。」とか、「今までと(あまり)変わらない保険料で保障を充実させることができるようになりました。」とか「今までにない素晴らしい保障が提供できるようになりました。」とか言いながら、既契約の乗換え・転換を勧めてきた。
 あるいは、「契約の見直しをしましょう。こんなに無駄な保障のために保険料を払っています。無駄を省くとこんなに安くなりますよ。」と言いながら、これまた単に無駄な部分を省くのではなく、全体を入れ替えることにより乗換え・転換を進めて来た。
 「今までになかったこんな素晴らしい保障ができるようになったの。素晴らしいと思わない?え、会社が危ないんじゃないかって?テレビでもあんなに宣伝しているし、大丈夫じゃない?この会社が危ないなんて、週刊誌に書いてあるみたいだけど、こんな良い保険を新しく出す位だから大丈夫じゃない?」
 残念ながらそうではない。良い会社もテレビに出るが、悪い会社も苦しまぎれに派手なテレビコマーシャルを連発するのは良くある話だ。良い会社も新しい商品を出すが、苦しい会社も新しい商品を出して契約の乗換えを一気に進めようとする。これは今まで何社も経験しているところだ。もし、「新しい商品を出すというのは、お役所が新しい商品を出しても良いと言ったという事で、お役所は潰れそうな会社にはそんなことをしないから、要するにこの会社は大丈夫とお役所がお墨付きをくれたようなものよ。」というセールスマンの言葉をそのまま信じているとしたら、こんな危険なことはない。
 もちろん今までにないような商品、今までなかった保障も登場して来ている。昔入った契約に無駄な部分が見つかることも多い。しかしだからといって今までの契約を全部なしにして、新しい契約に丸々乗換える必然性はない。不要な部分、過剰な部分だけとり除いて、新しい部分だけ追加すれば良いのだから。生命保険というのは何10年もの長期にわたる契約だという特性、その長い期間には当然契約者・被保険者の経済状況も環境も変化するだろうことを想定し、契約内容の変更の手段が様々に用意されている。一部の特約だけ解約するとか、保険金額を減らしたり、増やしたり、保険料の払方を月払から年払にしたり(その逆だったり)、新しい特約を追加したり、様々な制度が既に用意されている。用意されてはいるが、残念ながらあまり利用されることも説明されることもない。
 スクラップ・アンド・ビルドといって、今までの契約を全部やめて新しい契約に入り直す。新しい家や車を買ったときのようにすがすがしい気持になれるかもしれないが、それは保険会社の思うつぼ、まんまと契約の乗換えに成功して、予定利率も1%台まで引き下げるのに成功、ということになってしまう。その上、さらに「良い保険を勧めてくれて有難う」などと言われたらセールスマンはどんな顔をして返事をしたら良いかわからない位だ。

 前置きはこれくらいにして、以下、我々が実際に保険のコンサルティングを行う中で出会ったいくつかの事例を紹介しよう。
 明らかに不利な乗換え・転換のお勧めを拒否したケース、良い所を残し不要な部分だけとり除き、ニーズに合った保障に組み直すことにより、全体としてバランスのとれた保障を提案することができたケースを紹介しよう。
 また人生が長くなり、長生きのリスクを本気で考えなければならない時代の到来により、老後の医療保障をどう考えるか、相続やペイオフ対策をどう考えるか、具体的な事例につき検討してみよう。
 紹介する事例は全て我々が直接顧客にアドバイスする過程で行った実際のケースに基づいているが、プライバシーなどの考慮と説明をわかりやすくする為に、多少の修正を施してある。これらの事例が読者の皆さんが自分の生命保険カバーについて考える時の参考になれば幸いである。

 人の人生が様々なように、その人の生命保険に対するニーズも様々だ。それを網羅することはこの紙面を何ページ費やしてもできることではない。もし具体的に自分自身の保険カバーについて我々のアドバイスを聞いてみたいという方がいたら、下記に問い合わせて頂きたい。

  アカラックス株式会社
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