<老後の保障・一生の医療保障をどう考えるか>
枝野四郎さん (50代後半の男性・昭和21年生まれ・家族は妻と子供2人の老後準備世代)の場合


 枝野さんにお会いしたのは、私達が個人へのコンサルティングを始めた当初の時期で、まだお話をする相手もいない会社の立ち上げ時期で、知人からのご紹介でした。
 初対面なのに保険証券を預からせて頂き(一応お預り証をお渡ししました)、現在の保障内容などを表計算とレポートで取り纏めた上で返却させて頂きました。このときの分析シートや報告フォームおよび保険説明書が、現在の当社の基本処理となっています。
 枝野さんは20数年前(おそらくご結婚された頃)から、明治生命とAFLACに加入されていました。当然、契約の転換や特約更新も経験されているのですが、海外での勤務が長かったため、ほとんどの手続きは奥様に任せられていました。
 今入っている保険内容を知りたい、自宅も準備したし子供も成人しているので出来れば保険料を安くしたい、もっと良いプランがあれば知りたい、というのが面談の目的でした。
 保険証券には保険の歴史が残っています。奥様は、過去に非常に優れた選択対応を的確に実施されていました。相当過去の養老保険を平成元年に転換し、同じ明治生命の定期付き終身保険に加入されています。この時期は、保険の予定利率が6%前後もあったお宝時代の最終局面であり、予定利率1.5%程度の現在の商品と比較すると(年齢などが同じであれば)約半額の保険料で同じ保険金の終身保険に加入できた時代です。
 その後、平成11年の最初の特約更新時点で、保険料が2倍程度に高額となるところを家計経済上のリスクが低減したことに合わせて定期保険特約を減額させ、更新前と同等の保険料に据え置いた上で、再度の契約転換をせずに、お宝の終身保険を今日まで無傷で継続させていました。
 がん保険も昭和52年から継続されており、今では信じられないような安価な保険料で大きな保障を得られています。
 さて、現在の保険の内容は次の通りでした。
   明治生命:
     終身保険     500万円
     入院特約     5,000円
     ファミリー特約    3,000円
     障害特約     500万円
     定期特約    2,250万円
     災害特約     500万円
     保険料月額   36,354円
   AFLAC がん保険・家族型
     がん入院給付金 1,5000円
     保険料月額    1,900円

 まず最初に、証券に記載されている住所が現在の住所と異なっていました。サラリーマンには転勤や住宅購入による住所変更がつき物ですが、職場で保険に加入するとこんな保全処理はなかなかやってもらえないようです。後日、当社から変更申請手続きを行ないました。
 50代後半となり、住宅の準備も完了し、お子さんも手が離れ、死亡保障へのニーズは更に少なくなっています。これからの保障の中で重要なことは、現在の保険で準備されていない70歳以降の医療保障や老後生活資金の準備と考えられましたので、その点をご説明させて頂きました。
 定期保険特約を1000万円に下げることが出来れば保険料は更に1万円以上も軽減されるということ、そのファンドをがん保険の終身医療特約に活用すればご夫婦の終身医療保障を入手することができること、医療保障については短期払いの終身医療保険も選択できるなど、これらのプラン(死亡と医療の保障額の変化、保険料の変化など)を提案させて頂きました。
 その提案が一段落したころ、枝野さんから予想もしていなかった質問が飛び出してきました。お子様の保障についての質問です。「明治生命もがん保険も家族の保障がついていると説明されていたので当然子供の保障があるはずだが、それはどのような保障内容なのか?」ということでした。
 「お子様の年齢はお幾つでしょうか?」と聞けば、23歳を越えていました。確かに幾つになろうと、親にとって子供は子供ですが、生命保険の家族保障でお子様として面倒を見てくれるのは、保険会社で様々ですがおおむね18歳〜23歳までの年齢を限度としています。枝野さんのお子様については、年齢限度を越えているので保障の対象となっていないことを付け加えました。

 最終的に、枝野さんには資料の出来栄えや分析内容を誉めては頂いたのですが、実際に保険の手当てをするまでには約半年の期間を要する結果となってしまいました。枝野さんが重い腰を上げたのは、これ以上待つと年齢が上がってしまい保険料も上がってしまいますよという時期でした。こちらのクロージングが曖昧であった(または、提案内容への自信が不足していた)のかも知れません。保険は契約者が最終的に判断して加入するものですが、説明する側に確固たる信念がなければ具体的には前に進まないものだということを知る良い経験であったと考えます。
 しかしながら、反面、ろくに分析も解説もせずに自分または保険会社の都合だけで保険を販売している人でも、自信に満ち溢れている方がいるのも実態です。私たちを含めて正しい説明を自信を持って行なえる保険コンサルタントが増えることを祈念せずにはいられません。
 私自身、現在の自動車保険について十分な説明を受けたことも無く、毎年の契約更新時に電話で代理店に質問をしても、相手側に時間を浪費されたあげく最低限の不十分な回答しか得られず、契約期間の時間切れになると脅されて、よく似た内容の3点の中から選択させられ、しぶしぶ更新している状況です。
 契約者側の立場での提案を行なうためには、相手のプライバシーに関する事項に立ち入らなければならず、多くの時間を要する事となります。また、しっかりと相手に説明をするためには、自分自身が本気で勉強しないと判らない事も沢山あります。説明すればするほど、質問も多く出てきます。
 たとえば、定期付き終身保険(終身500万円+定期保険特約4,500万円)に加入されている方がいると仮定します。かっこいいライフプランナーがやって来て「ご主人、この保険は5,000万円も死亡保障があるとても安心な保険だと信じていらっしゃるでしょう!確かに59歳まではそうですが、60歳を過ぎると500万円しか保障がなくなることをご存知ですか?今ならまだ間に合いますから、一生涯2,000万円(あるいは3,000万円)の保障がある保険に切り替えましょう!」と乗り換えを薦められるかも知れません。この場合、幸いにも60歳まで生き長らえた方にとっては、その後も同額の保障が残されているのでとても良い選択をした結果となります。しかしながら、契約を乗り換えて、45歳の時に亡くなったとしたらどうでしょうか?乗り換えしたばかりにご家族は2,000万円(あるいは3,000万円)の死亡保障しか得られず、乗り換えしなかった場合の5,000万円の死亡保障が得られなくなります。おそらく保障金額が足りない結果となってしまうケースが多いのではないでしょうか?小型の終身保険よりも大型の終身保険の方が良いに決まっていますが、カッコ良いプレゼンテーションを鵜呑みにしてしまうと現役時代の本当に必要な保障額を失ってしまうことになるかも知れません。
 保険の本質は保険事故が起きた時に役立つという商品性にあると考えると、加入する時に保障の目的をはっきりと定め、保障の種類を選び、保障の期間と保険料(および支払期間)を決めることが何よりも大切であると感じます。同様に、保険事故が起こったときに、契約時点で準備した保障の内容が的確に実施される必要があります。また、長期の契約ですので経営に不安のない会社を選ぶことも重要です。
 私達は、保険の入り口でのコンサルティングと出口でのサービスをきっちり実行することで顧客に安心感を与えることが、保険に携わる人間の使命であると確信しています。