【Inswatch】162 <9/8/2003>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【2】保険業界随想(8)                   坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

PCA生命の代理店チャネルからの撤退に思う

◇PCA生命、直販チャネルに集中へ  

AIGによるGEエジソン生命の買収が正式に発表され、S&Pは早速9月1日付けで GEエジソンの格付けをAAAに変更しています。  同じ9月1日、PCA生命は代理店チャネルから撤退すると発表しました。代 理店経由の保険の募集は9月末までで停止するということです。PCA生命は2 年前にオリコ生命から今の名前に変えましたが、その頃から直販チャネル[FA (ファイナンシャルアドバイザー)と称しています]による募集体制作りを進め ています。今後はそのチャネルに集中するということです。  

既存の代理店は保有契約の保全のこともあり、代理店委託契約は当面そのまま にして、継続手数料は払い続ける。但し新契約の募集は停止とするので、募集関 係の資料は回収または廃棄するということです。 (ついでに既存の代理店チャネルのための全国11の支社も9月末で全て閉鎖す ることになっています。代理店チャネルの仕事をしていた従業員は、基本的に全 員9月末で希望退職ということのようです。)  

アカラックスの子会社のアカラクシアもPCA生命の代理店。さらには生保乗 合の代申会社ですから、今回の話は他人事ではありません。  新契約の募集ができない募集代理店というのは、何ともすごいやり方だなあと 思うのですが、PCA生命側の言い分は代理店委託契約書上、募集を委託しない 保険種類を指定できることになっていて、それを今回全保険種類について委託し ないことにするということです。  

何とも驚くべきやり方です。直販チャネルの方は、今さかんに人の採用もやっ ているのですぐにはストップできないでしょうが、これもいつまで続けられるの でしょう。  PCA生命は前身がオリコ生命、大元をたどればコンバインド生命です。この 会社は1982年に日本に参入し、その直後に日本のマーケットが当初見込んでいた ものと違うと発見し、その後何年もの間営業活動を凍結したまま、会社の買い手 を探していたという経緯があります。  その後会社はオリエントコーポレーションに買収され、それがまたイギリスの プルデンシャルグループに買収されて、今のPCA生命になりました。

◇代理店委託契約書は不平等条約?  

皆さん多分、代理店委託契約書など何年も(何十年も)見たことがないと思い ます。この機会に金庫の奥から引っ張り出してみませんか。保険会社と代理店の 間の、かなり一方的な不平等な契約になっています。勿論、代理店の方に一方的 に不利なようにです。悪いことをするのは一方的に代理店。その被害から保険会 社を守るために、保険会社側には色々な権利が与えられ、いつでも好きなことが できます。これも元を正せば、保険業法が同じようになっているのです。悪いこ とをするのはいつでも保険会社と募集人。それを防ぐために様々な規定を設けて、 違反したら罰則が用意されている。お役人は悪いことをするわけがないので、何 の罰則も用意されていない。このような不平等条約の世界が保険ビジネスの世界 です。

(生命保険アクチュアリー、アカラックス(株)代表取締役) http://www.acalax.jp