【Inswatch】152 <6/30/2003>

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【4】予定利率引き下げと契約者の選択                   坂本 嘉輝

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「予定利率引き下げ法案への対処」

予定利率引下げ法案が無理やり衆議院を通過しました。参議院を通過するのも 時間の問題のようです。予定利率引下げについて消費者はどのように考えたら良 いのでしょうか。  

今回の予定利率の引下げは、「契約者自治」・「自己責任」という美辞麗句を 隠れ蓑にした、行政(監督官庁)の責任回避でしか思えません。したがって、ま ず第一に必要なのは、お役人には一切期待しないという覚悟が必要でしょう。誰 かに頼るのではなく、自分で考えるしかないでしょう。 シナリオはいくつも用意されています。

◇第1は契約保険種類の確認から  

解約して別の保険会社に入り直す。解約して、もう保険はやめてしまう。その まま放置して、予定利率の引き下げにしろあるいは破綻処理にしろ、成り行きに 任せる。  

いずれにしても何らかのアクションを起こすのであれば、まず第1に自分がど のような保険に入っているのか確認するところから始める必要があるでしょう。 予定利率の引き下げあるいは破綻処理で、保険金額の引き下げその他ダメージが 大きいのは、終身保険・養老保険・年金保険など貯蓄性の高い商品であって、掛捨ての定期保険や医療保険などは保険金額や給付金額があまり引下げられること はないでしょう。自分の契約がこれらをどのように組み合わせたものになってい るのか、確認することが必要でしょう。

◇更新や下取りで変わる予定利率を認識  

今回の予定利率の引き下げの対象となると思われる1996年以前の契約は、いわ ゆる更新型の定期保険特約付き終身保険に、同じく更新型の医療関係の特約が付 加されたものが多いですが、このような契約の場合、契約を継続しても更新の度 に保険料率が見直されることになります。予定利率は更新時の最新のものに変更 され、また保険料は更新時における年齢で再計算されます。言い換えれば、予定利率の引き下げが更新の度に自動的に行なわれるのです。これは破綻が懸念され る生保だけでなく、健全で破綻しそうもない生保に入っている場合も同じです。  

あるいは契約に加入して何年かすると、保険の見直し・下取り・転換のお勧め を受けることがあります。「今までなかった保障が新たに追加されました」、 「保険料がお安くなりました」、「保障の選択が自由にできるようになりました」 等々有利な条件だけ並べ立てられ、「それでは今までの契約は下取りしてその資 金を新しい契約の払い込に充てましょう」・・・いつの間にか保険料は最新のも のに変わってしまいます。予定利率は勿論、以前の契約より低い最新のもの(現 在は1.5%程度)に変更されてしまうのです。  

このようにして、保険会社の破綻や予定利率の引き下げがなくても多くの場合、 加入済みの契約の予定利率はいつの間にか最新の水準に引き下げられているので す。もしかするとあなたの契約は既にそうなっているかもしれません。

◇一旦やめた契約は元に戻らない  

冷静に、まず自分が入っている契約がどのようなものか確認する所から始めま しょう。その上で、契約を続けてもやめてもいずれにしても、あまり有利な選択 肢はないということを理解した上で、どうするか考えましょう。  

どうなるかわからない不安を抱えたままでいるのは嫌だということであれば、 精神の安定のために、契約を解約してしまう、あるいは安全な生保の契約に乗り 換えるというのも一つの方法でしょう。  

どうせ大差ないんだったら、面倒臭いからこのままにしておこう、というのも 一つの考え方でしょう。  

今の契約をやめる、あるいは入り直すと考える場合、大事なのは保障を切らさ ないということです。保険は「自分がセールスマンに頼まれて入ってやっている のだ」と思っている人も多いのですが、自分が入ると決めただけで入れるもので はありません。自分が入ると決めて申込の手続きをした後、保険会社が引受ける (申込みを承諾する)と決めて初めて保険に入ることができます。病気中だった り、健康状態に多少の問題がある(たとえば健康診断でいくつか問題を指摘され ている)場合、保険会社の方で保険加入を断わってくる場合もあります。そうな ってから、一旦やめてしまった契約を元に戻すことはできません。  

入り直す場合の原則は、まず最初に新しい保険に加入し、入ったこと(保険会 社が引受けたこと)を確認した上で、前の契約を解約するということです。この 順番を間違えてはいけません。

◇7月11日には予定利率問題でセミナー開催  

以上が一般の消費者からの問い合わせに対する私の回答の概要です。  

法案審議の進捗状況、AIGのGEエジソン買収など生保関連のニュースのたびに お客様からの問い合わせも多く寄せられることと思います。そのようなときの参 考にしてください。  

なお、来週金曜日、7月11日に東京で、以上のようなことも含めた『生保・ 予定利率の引き下げ問題と2003年3月期決算』と題するセミナーを開催しま す。興味のある方はぜひご参加ください。(内容、申込み等は以下をご覧下さい)         

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.linkclub.or.jp/~lax

★緊急企画 <アカラックス主催のセミナーのお知らせ>  

7月11日(金)に「生保・予定利率引下げ問題と2003年3月期決算」について の講演会(講師:坂本嘉輝)を、以下の要領で開催します。

〇日 時:2003年7月11日(金)午後2時〜4時半
〇場 所:ANJOインターナショナル東京本部 第8教室(千代田区神田須田町1 −9−1ANJO1ビル
  電話03−5298−7575、交通博物館前)
〇会 費:5,000円(税込)定員120名
〇セミナーの案内チラシ(ファックス申込書付き)は http://www.acalax.jp/hp/acalax_seminar.pdf
〇セミナー申し込みは http://www.acalax.jp/hp/formmail_seminar/contact.html