【Inswatch】154 <7/14/2003>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【7】窓の外は立食いそば(無謀な新米乗合代理店の日常)    新越 博之

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(6)最近の生命保険コンサルティング事例から(後編)

◇M生命の契約者が連続して来社しています  

前回に引き続き「生命保険の売り方の歴史」について続編を書かせて頂きます。 当社には時期を同じくしてM生命の契約者が次々と相談に訪れ、前編では1985年 (昭和60年)の契約事例を紹介しました。今回は1988年(昭和63年)の契約事例 で生保販売戦略の変化をご紹介することとします。

◇昔の名前で売られているけれど  

前回と同じくM生命に昭和63年に加入した契約者が相談に来ました。前編の商 品と全く同じ名前であったため「これは楽勝」と高を括りその場で証券の説明を 始めようとしましたが、証券の記載内容や表示が昭和60年の契約と全く違ってい ます。裏面にも記録が何行も記載されています。結局、証券などのコピーを預り 「次回の面談までにレポートを作成した上でご説明します」とその場をやり過ご すのが精一杯の状況となりました。

◇昭和63年の証券は難解  

契約時点の保障が一覧で証券に記載されているのは同じなのですが、その文字 の小ささ、説明文の多さ、注釈や数字の意味の判りにくさ、など保険証券は見る のがイヤになるような仕様となっていました。裏面には契約内容変更証として、 保険料、定期保険特約、災害割増特約のそれぞれの金額が記載されています。こ れは一体何だ?というところから調査が始まりました。前回と同じ商品名の保険 ですが、とても「夢」を感じるゆとりはありませんでした。

◇転換の原資は何と10年で消滅  

今回の契約は、主契約の終身保険が180万円、定期特約が3,420万円の20倍型の 定期付き終身保険です。前回に紹介した昭和60年の契約は主契約が500万円、定期特約が2,500万円の6倍型でしたので、定期の倍率が3倍以上拡大しています。 そして、前契約を転換した原資は、後契約の定期保障の買い増しに充当されてい ました。定期保険特約は10年更新型なので10年経過すると前契約の原資が跡形も 無く消滅してしまう仕組みとなっています。当然、主契約である終身保険の保障 額は極めて小額(500万円→180万円)となっています。

◇定期特約は10年毎に保険料の大幅値上げ  

大型の死亡保障が売りである保険商品であるにもかかわらず、契約後10年目に 迎える最初の特約更新処理で契約者は大きな問題と対峙することとなります。更 新の案内には「このままでは保険料が2倍以上に値上がりします」と記載されて いたのでしょう。証券の裏書には、定期保険特約の保障が(3,420万円から) 1,320万円に変更(減額)されたことが明示されていました。20倍の大型死亡保 障として販売しているものの、最初の特約更新で保障金額が半分以下になってし まう、転換前契約の資源は無くなってしまった、支払う保険料だけが変わらない、 「こんな契約に誰がした!」と言いたくなります。

◇医療特約で最後のダメ押し  

それでは、医療関係の特約はどうだったか?元々の保険料が小額であったため (例えば2,500円)、最初の更新処理で2倍程度 (例えば4,500円)に値上がりして もさほど気になりません。しかし、主契約保険料の払込満了を迎える65歳の時に、最初の悲劇が生じます。65歳以降に80歳までの医療保障を継続したい場合には、 その後の特約保険料を一括して前納してくださいという旨の説明が、証券のすみ に小さな字で書かれています。それが幾らかは書いてありませんが、55,745円 (月額)の15年分と表示されています。計算すると、これだけで1,000万円を越 えてしまいますが、こんな単純なことさえ契約者には分からない「読めない保険 証券」となっています。

◇払込期間も長期化の一方  

保険料の払込期間は65歳までとなっています。前回の契約(昭和60年)では60 歳までであったのが5年も長くなっています。平成5年(3件目)の契約がどうで あったかは予測できると思います。まさに70歳!と更に長期化していました。70 歳の根拠は何だったのでしょうか?見かけの保険料を安く見せるためにここまで するのかと呆れてしまいます。  

契約がたった3年しか違わないのに、転換の方法、特約の特性が全く変わって いました。そして、保険料払込期間は確実に長期化しています。  

予めこの仕組みが分かっていたら、どのタイプで契約に加入するかは明らかで あると思います。現在、盛んに宣伝されているアカウント型の商品が何を意図し てどのように販売されているかは明白であると考えます。こんな商品を設計して きた人達、こんな商品を営業現場に売らせ続けてきた本部のお偉いさん達、そん な人達に生命保険への信頼を回復させたり、顧客に選ばれる商品を提供したりす ることが期待できるのでしょうか?

(アカラクシア(有)マネージャー、カスタマーサービス)
http://www.acalax-ia.co.jp