【Inswatch】151 <6/23/2003>

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【3】窓の外は立食いそば(無謀な新米乗合代理店の日常)    新越 博之

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(5)最近の生命保険コンサルティング事例から(前編)

◇M生命の契約者が連続して来社しています  

予定利率引下げ問題がマスコミに取り上げられ、世の中が生命保険に対して騒 がしくなってきました。当社では、時期を同じくしてM生命の契約者が3名連続し て相談に訪れました。1件目は1985年(昭和60年)の契約、2件目は1988年(昭和 63年)の契約、3件目は1993年(平成5年)の契約でした。思いも掛けずM生命の 「生命保険の売り方の歴史」を保険証券で目の当たりにすることとなりました。 ◇昭和60年の販売資料一式を発見  最初のケースは、契約者が保険に無頓着であったため、保険証券など関係資料 が所在不明であり、給与明細書の記録から保険会社と月払保険料だけが判る状況 からのスタートでした。最初に相談に見えた後、当社からのアドバイスで身の回 りをくまなく捜索し、会社の荷物の中から保険証券、約款、保険設計書、当時のパンフレットなどがまとめて発見されたという次第です。お陰様で「大切に保管 されてきた18年前の販売資料一式」を拝見することができました。

◇昭和60年には夢がありました  

今では相当珍しいと思われる当時のパンフレットには「夢」がありました。30 歳の男性が3000万円のプラン(主契約の終身保険はたった150万円)に加入し、 60歳まで保険料18,580円(月額)を支払った場合、その配当金は60歳で335万円、70歳で732万円、何と80歳では1,605万円と大きく表示されています。相談者の契 約は終身保険500万円に定期保険特約が2,500万円という更に大型の契約だったの で、契約時点での「配当金の夢」はさぞ大きなものであったと思います。

◇転換処理は親切でした  

この契約の主契約は終身保険で、終身保険金500万円に対する保険料は僅か340 円となっています。こんな保険料のはずがないと調べてゆくと「転換」をしてい ることが判明しました。この転換では、下取りされた前契約の責任準備金を後契 約の主契約(終身保険)の一時払い保険料に充当しています。前契約の資産を 100%有効に後契約に引き継ぐ方法が取られていることに感心しました。その後、 契約者がM生命からの再三の「再転換(再見直し)」のご案内に無頓着であった ことも幸いし、今日まで「予定利率5.5%」の終身保険として無事に生き長らえて きています。これからも、この終身保険だけは解約しないようにとアドバイスし たので、契約者の一生をサポートしてゆくと予想しています。

◇特約も親切でした  

まず、死亡保障に関して、定期保険特約は保険期間と保険料払込期間が共に60 歳までとなっており、契約時点から当時の一般的な定年まで保険料が変わらない 仕組みとなっています。最近のように10年毎に保険料が倍々となって支払が困難 となっていく仕組みと比べて非常に親切な(誤解を生じさせない)契約体系であ ったと感じました。  

さらに、医療関係の特約は保険期間と保険料払込期間が共に80歳までとなって おり、60歳の退職(=主契約の払込満了)時点で以降の疾病入院特約などの継続 を希望した場合でも月額2,500円程度の負担(20年分を一括前払いしても60万円 程度)で対応できる仕組みとなっています。18年も昔の契約なのに、その後の契 約と比べると「とても安心」な契約と思えてならないのが不思議です。

◇払い済みにしたら終身保険金が増えちゃいました  

相談者は3月に60歳となっており(退職し)、その後の「保険の対応」が分か らないため5月になって相談に来られた次第です。保険料の支払満了期日までは 半年以上あるのに、月末には払込猶予期間が終了してしまいます。保険料の支払 方法などを調査したあげく、最終的には、この契約を「払い済み」とすることが 一番有利であるとの結論に達しました。というのも、主契約や医療関係特約の保 険料が小額なため口座振替をして貰えない、たまたま「義理」で終身医療保険に 加入していた、医療関係特約にも解約払戻金があり主契約に充当することが可能 であった(主契約の払済保険金がかなり大きくなることが判明した)、など様々 なやり取りがあり、結局は契約者に一番有利な選択をすることとなりました。

◇次回に続く  

この「契約者にやさしい生命保険の仕組み」が、次の相談事例で、その後わず か3年で「10年更新型」に切り替わっていったということを知ることとなり、そ の悪影響が個々の契約者にどのように生じていったかを目の当たりにした時、商 品を作る側の問題や商品を売らせる側の問題など「生命保険業内に内在する体質 的な問題」の幾つかに気が付いてしまうようになります。次回の事例では、どん な風にエゲツなく変化していったかをご紹介させて頂きます。

(アカラクシア(有)マネージャー、カスタマーサービス)
http://www.acalax-ia.co.jp