【Inswatch】147 <5/26/2003>

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【8】窓の外は立食いそば(無謀な新米乗合代理店の日常)    新越 博之

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4)変額保険の販売資格試験に問題有り

◇変額資格も取り直し  

第1回で生命保険の募集人資格を剥奪されていたことを記載しましたが、この 再試験は99点で合格しました。悔しかったのでマイナスの理由について後述しま す。さて、これで損保募集人試験までは安心と高を括っていたのですが、乗合手 続きを開始し、変額保険に特化しているS生命との手続きを実施した際「変額保 険の販売資格」についても再受験をしなくてはならないことが判明しました。あ る程度の覚悟が出来ていた時期だったので、前向きに捉えることとしました。  

変額保険の歴史には、銀行チャネルでの販売で過去に多くの訴訟問題を抱えて いたという経緯があります。にもかかわらず、銀行での一時払い変額年金保険の 販売が認可される時代となった今、テキストや試験の内容も大幅に変化している だろうと期待していました。専門課程の合格が受験資格となっており、その試験 と変額保険の試験を同日にダブルヘッダーで受験し、両方を合格する必要があり ます。一般課程試験の復讐戦とばかりに「専門も変額も両方とも満点を取って見 せる」と意気込んで申し込みを行なった次第です。

◇テキストが進歩していない  

さて、届いたテキストを一読して、呆れ果ててしまうこととなります。受験者 の中には銀行や証券会社の人達、つまり一時払い変額年金保険を売るために受験 している他業界の人が多数いるにもかかわらず、テキストの内容は一般の変額保 険について記載されています。何のために銀行や証券会社の方々がこの試験を受 験するのだろう?このテキストを勉強することが本当に顧客への正しい説明に繋 がるのだろうかと考えさせられてしまいました。  

銀行窓口で販売されている一時払い変額年金保険は、払い込まれた保険料の全 額が特別勘定(契約者が選択したファンド)に投入されます。そして保険関係費 用と運用費用がそのファンドから毎日控除されてゆきます。この仕組みの説明は、 銀行窓口での販売時点で極めて重要な説明事項となっています。しかしながら、 テキストには「変額保険の保険料のうち、特別勘定で運用されるのは、将来の保 険金支払いのために必要な部分です。なお、付加保険料のように経費として使用 される部分などは、定額保険に関する勘定(一般勘定)で管理されます。」と説 明されています。  

同様に、保険契約としての剰余金や配当金がないにもかかわらず「定額保険の 場合、剰余金の生まれる原因は、死差益、利差益、費差益の3つに分類され剰余 金の3利源といわれます。一方、変額保険の場合、定額保険の利差益に相当する 部分は、変動保険金の増減に反映されますので、剰余金の利源は死差益、費差益 に限られることになります。剰余金からの配当は、定額保険と同様に、毎年度末 の決算日に、契約してから1年を超えている契約に対して割り当てられます。な お、変額保険には特別配当はありません。」とこれも一般の変額保険の仕組みだ けが記載されています。解約についてもこの調子で、早期解約控除についての説 明は、もちろんありません。

◇まじめに取り組んではいけない  

最終的に、次のような結論に達してしまいました。銀行や証券会社からの受験 者の方々で、特にまじめな年配の方々は、必死にテキストを勉強し少しでも理解 を深め良い点を取ろうと努力したことと思いますが、それは逆に、自分達が販売 する商品の正しい理解を阻害する結果に繋がってしまいます。こんな試験、最低 合格点さえ取れればいいんだ!と適当な気持ちで受験している「一夜漬けのいい 加減なアンちゃん達」の方が、よほど正しい受験行動、あるいは間違った商品知 識を身に付けない行動になっていると言う結論です。顧客への商品説明は、どち らの受験者の方が正しく判り易く出来るのか、その意味で現在の「変額保険の募 集人資格試験」には大きな問題があると考えます。  

ここで、最初にお預けとした99点の原因について「思いの丈」を書きます。 不正解とされた問題は「ご契約のしおりは、定款と約款と共に製本されている」 こんな問題でした。長く外資系生保の「ご契約のしおり・約款」を見てきたので、 迷わず×を選択し「定款があるのは相互会社だけ」と自信を持っていました。し かし、試験結果を聞いた途端に「テキストにどう書いてあるか」が問題なのだと 気づきました。生保業界の試験は「テキストにどう書いてあるのか」が基準とな っているようです。と言うことは、変額保険についての試験問題もテキストの内 容が最大のポイントとなります。そのテキストが先ほどの状況です。テキストや 試験問題を作成する人は、その社会的な責任の大きさを自覚し、直ちに改善をし てもらうよう強く希望する次第です。結果的に専門も変額も満点でしたが、特に 喜びはありませんでした。         

(アカラクシア(有)マネージャー、カスタマーサービス)
http://www.acalax-ia.co.jp