【Inswatch】138 <3/24/2003>

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【5】窓の外は立食いそば(無謀な新米乗合代理店の日常)    新越 博之

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(2)代理店登録もなかなか大変

◇代理店の立ち上げ  

アカラックス http://www.acalax.jp/hp/ のメンバーは、もともと生命保険会 社の本社部門出身者が大半を占めていました。古い者は20数年も前に募集人資格 を取得していますし、その後、認定生命保険士の資格も取得しています。生保出 身以外のメンバーも、前回(135号)紹介したある外資系生保のスーパーカリス マ直販社員「隣のTOT君」の仕事をサポートする目的で一般課程試験をクリアし ていました。  

「いま不足しているのはインフラと営業経験だけだ」との大前提で代理店を始 める決断をした後、早速アカラクシア(代理店としての子会社)の登記手続きを 進め、事務室の入口扉やビル総合案内表示板への商号表示の段取りを付け、保険 設計システム用の専用PCの選定にも着手しました。

◇生保代申をどこにするか  

ここまで来ると、次には、生保の代申保険会社をどこにするかという問題が生 じてきます。出身会社に頼むと「乗合はダメよ」と条件を付けられるかも知れま せん。漠然と他社に頼んでも「ちゃんとした紹介者を立てて下さい。」と断られ るかも知れません。いろいろシミュレーションをした結果、商品開発や営業成果 がうまく行っていない外資系生保に頼むのが良いであろう(ひょっとしたらアカ ラックスのお仕事につながるかもしれない)との結論に達しました。

◇そんなに甘いもんじゃない、と忠告され  

幸いその条件にピッタリはまるP社に知人がいたので、まずは電話で彼をお呼 び出しとなります。何も知らず、当社に来社してくれた彼に「実は!」と話を切 り出します。1年経った今でこそ、外資系A社では「支社内ランキング5位」な んて指標もあるところまで来ましたが、当時の我々には「誰に売るんですか?」 とか「何を売るんですか?」とか質問されても「それはこれから考えるんだ。」 としか答えられません。営業にプライドを持っている彼はしまいには怒り出して 「無謀ですよ!」とお説教を始め出すこととなります。「代理店経営とはそんな に甘いものじゃない。これから代理店を始めるなら、チャンとしたマーケットを 持っているか、卓越した営業スキルを持っているか、どちらかがなければ失敗す るだけですよ!」とコンコンとお断りの説明を延々としてくれました。

◇とっても頼りになる担当者  

こちらも彼が言う道理を理解できない訳ではないので、ただひたすら「聞く耳」 を傾け、しばらくは彼がしゃべり疲れるのを待ち「なるほど!なるほど!」と相 槌を打ち続け、最後に「だから、君にしか頼めないんだ!それじゃあ代申宜しく ね!」と引き受けてもらった次第です。呆れながらもシブシブ引き受ける事とな った彼は、今でも、当社の面倒を良く見てくれる「とっても頼りになる担当者」 として健在です。  

さて、保険会社や協会への代理店登録の具体的な事務作業に着手することとな ります。あれこれ面倒くさい書類は彼が全部用意してくれました。担当者が経験 豊富であり誠実であるとこのあたりの手続きはスムーズに進むのですが、これが 未熟な担当者であったり、いい加減な人物であったりすると「簡単な説明」だけ で代理店が全てやらされることとなるため手間が掛かってしまい、記載内容の不 備などで何度も出し直しさせられる結果となってしまいます。  

担当者から見れば「別に自分の成績となる仕事ではない」という事なのでしょ うが、担当者の人間性(あるいは生命保険会社の風土)で代理店の手間や浪費さ せられる時間が変わることは珍しくありません。この問題については次回以降も 「事ある毎に」事例の中で説明させて頂く事とします。

◇あれ!?資格抹消で再受験の羽目に  

あとは生命保険募集人としての登録だけです。全員の資格番号を連絡し、乾杯 の準備をして「手続き完了!」の電話を待っていました。彼からの電話です。 「少し申し上げにくい事なのですが・・・実は、資格が抹消されている方がおり まして・・・」ハタっとして誰の資格が抹消されているのだろうか?頭の中を不 安が過ぎります。隣のTOT君からの代理店異動が認められなかったのかなぁ?な んて考えていると最後の判定が告げられました。「YさんとHさんです。」この 二人は最初に紹介した古い人達です。    

最上級の資格を持っているのに「最低限の基本資格」が抹消!そんな事あり? 事実のほどは判りませんが、一定期間、生命保険会社から離れていると資格を剥 奪されるようです。「何とオラガ村的な処理なんだろう」と溜息をついた次第で す。という事で、20数年ぶりにオバチャマ達に混じって、一般課程テキストを片 手に試験会場に出向く羽目となってしまいました。サゾカシ問題も変わっている だろうなと期待して受験したのですが、試験問題の内容は昔とほとんど変わって いませんでした。変わっているといえば「統計的な死亡の原因の順序」や「本人 確認」くらいのものです。この業界は社会や経済の変化に対して「表面的にはカ ッコ良く対応策を発表しても、基本的な最初の対応さえできない業界だ」という 実態をつくづく思い知らされる悲しい経験となってしまいました。          

(アカラクシア(有)マネージャー、カスタマーサービス)
http://www.acalax-ia.co.jp