【Inswatch】135 <3/3/2003>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【5】窓の外は立食いそば(無謀な新米乗合代理店の日常)    新越 博之

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(1)代理店開業のそもそものいきさつ  

保険会社各社は、自由競争への環境変化に対応するため、営業チャネルの多様 化と新商品の開発に迷走しています。神戸で震災があったころ、生保ではプルデ ンシャル生命やソニー生命の「ライフプランナー」と呼ばれる男性直販社員によ る営業戦略が成功し、保有契約の純増では業界のトップに居並ぶようになってい ました。  

外資系生保では「エルダ」とか「スマイル」とかユニークな名前を付けて、同 じ方式で同じ成果を挙げようと躍起になっていました。しかしその後、これに成 功した追従会社があるとは聞いていません。先行2社以外については、この組織 を闇から闇へと葬りつつあります。

◇独立する直販社員のサポート  

アカラックス(当社)は、生命保険の再保険仲介業務を主たる目的として、一 昨年5月に会社を設立しました。 
http://www.acalax.jp/hp/

その年の9月、ある外資系生保のスーパーカリスマ直販社員(TOTと呼ばれて います)から、会社がイヤになったので独立したいとの相談を受け、結局、会社 の登記から事務所の開設、その後の社内事務までをトータルにサポートすること となりました。9月末に正式に依頼され11月当初には全てを完了させ、TOT君へ の会社側からの引き止め工作などがあり、退職手続きが事務所開設に間に合わな い逆転現象となりました。  

それから半年後、その会社は直販チャネルから撤退することを余儀なくされ、 直販社員をすべて代理店にするとの前向きな表現で対外的に撤退発表を行ないま した。これにより路頭に迷うこととなった直販社員達が、TOT君に相談するため 当社を訪ねて来ます。直販として充分な実績を持つ実力者から、直販に転職した ばかりでダマサレタと呆然とする人まで、これまた様々な人種の方々です。  

この対応方針について、TOT君と当社の意見が真っ向から対立してしまいまし た。これ以上協議してもまとまらないことが明確となったことから、TOT君とは 2002年3月末で円満に協力関係を終了させることとなったのです。

◇何となく「勢い」で代理店に  

当時は仕事の依頼がピタッと止まってしまっており、先行きが心配な時期でも ありました。この機会に「TOT君の営業現場の勉強をしておくことも当社の仕事 に有益だ」という話題となり、その勢いで代理店登録を行なうハメとなってしま ったのです。  

さて、アカラックスでは生命保険の再保険を仲介することを主たる事業目的の 1つとしているので、ここで代理店登録をしてしまうと「代理店とブローカーの 兼業禁止」に引っ掛かってしまいます。そこで「AcaLax」のスペルの後に「ia (insurance agent)」を付けることで「アカラクシア」と命名した子会社を設 立し、この会社で保険代理店を行なうこととなりました。

◇会社を興すまでの分厚い壁  

既に会社を設立した経験を持つ方々には何の問題もないことですが、これから 代理店になろうとして独立する人が最初にぶつかる壁があります。  

会社の設立時には設立資金を証明してもらう銀行口座が必要となりますが、こ の口座がなかなか作ってもらえません。名刺を作ろうとすると業務用の電話番号 やメイルアドレスも記載しなくてはならず、通信関係の手続きが「事前」に必要 となることに後で気づきます。事務所を借りようとすると登記簿などの書類が必 要となり、登記しようとすると賃貸借契約書が必要となり、手続きに矛盾が生じ ます。保証人を探すのにも一苦労することとなります。

社員を雇う場合には更に深刻で、健康保険や社会保険の手続き、添付する就業 規則の作成など・・・やらないと仕事が始められない不慣れな時間の掛かる手続 きで時間も体も占有されてしまいます。専門家に頼むとお金が掛かるし、よほど 頼りになる経験者からのアドバイスでもなければ数ヶ月を要してしまいます。こ んな時に「助成金がありますよ」と言われても、急ぐことばかりに時間が取られ 眠る暇も無いのに、この上「分厚い助成金マニュアル」を読むなんて、そんな気 力さえ残されていないのが実情です。

◇会社はできたけれど  

さて、事務所では電話の工事やインターネットの設定、机や家具のレイアウト にも追われます。やれやれ一段落と本人が思ったころ「FAXの送信は出来るが受 信が出来ない」とか「コンセントの位置が機材の配置と合わない」とか「書類を 入れる収納が足りない」とか「恵贈された記念品を飾る場所がない」とか、考え ていたことと違う事態が生じてきます。  

一方、敷金や家賃の支払でお金を使い果たした頃、仕事の話は来ないのに、不 思議と事業資金の貸付DMが商工ファンドとか「もっと怪しい業者」から次々と舞 い込んできます。あ!お客さんかな?と思って玄関に行くと新聞屋さんや置き薬 屋さんだったり、NHKの職員を名乗る訳のわからない人だったり・・・トホホと なってしまいます。          

(アカラクシア(有)マネージャー、カスタマーサービス) http://www.acalax-ia.co.jp