【Inswatch】163 <9/15/2003>

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【4】代理店のための生命保険入門(30)            坂本 嘉輝

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生命保険の基本的な仕組み(8)

最終回 :解約返戻金の話  

前回まで保険料を計算し、それで収支が合っているかどうか、儲かっているか 損しているか判断するために責任準備金を計算し、それを使って儲かっているこ とがわかったら、その一部を契約者に還元するという所まで話しました。 今までの話は契約が順調に継続している場合の話です。生命保険は何十年にも わたる長期の契約ですから、その間様々な状況の変化が予想できます。

◇保険契約をやめる場合  

保険料が払えなくなった・保障が必要なくなった・他の契約に入ったのでこの 契約はいらなくなった等々。本来的な契約の終期は何年も先なのに、それを待た ずに契約を終了させることがあります。一般に保険契約の場合、この契約を終了 させる権利は契約者の方に一方的に与えられています。契約者はいつでも自由に 契約をやめることができる。保険会社は基本的に勝手に契約をやめることができ ない。こうなっています。

◇解約返戻金の考え方  

さてその時、今まで払ってきた保険料のうち、将来の支払のために留保してき た積立金はどうなってしまうのでしょうか。  

ここでの考え方は、死亡の場合の考え方と基本的に同じです。いくつかの契約 が解約されても、残った契約の全体的な将来の死亡率が契約が解約されなかった 場合の死亡率と変わらないのであれば、1契約あたりの責任準備金を全契約で頭 割りして、それを残った契約の分だけ合計した額の責任準備金が保険会社に用意 されていれば、それ(と残った契約から今後入ってくる保険料)で将来の保険金 の支払ができるということです。  

言い直せば、全体の責任準備金を頭割りして、残った人の分がそのまま留保さ れていれば、解約する契約の分の責任準備金は余るということになります。  

この余りを解約する契約の契約者にそのまま返すとすると、これが解約返戻金 になります。  

まるまる返すのでなく、ちょっとだけ減らして返すというやり方もあります。 減らす分についてはたとえば返すのに手間がかかるとか、株や債券を売却して返 すお金を用意するのにコストがかかるとか、病気の人や死にそうな人はあまり契 約を解約しないから、健康な人がどちらかと言えば解約する。そのため残った人 の死亡率はやはりちょっと高めになってしまうとか、世のため人のため保険会社 のためとか、色々な理屈づけがあります。  

これを全く返さないで会社の儲けにしてしまうとか、残った契約者全員のため の積立金に入れてしまうというやり方もあります。この場合はその分、もともと の保険料を安くすることができます。  

生命保険の基本的なしくみの説明も今回の解約返戻金の話で一応一段落です。 inswatchも来月から誌面構成が大幅に変更される予定です。新しい誌面では表や 図も自由に使えるようになるはずなので、これまで8回にわたって説明してきた 内容も、具体的な計算例もふんだんに盛り込みながら、改めて書いてみたいと思 っています。  

ここまで読んで頂いて本当に有難うございました。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp