【Inswatch】137 <3/17/2003>

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【3】代理店のための生命保険入門(24)            坂本 嘉輝

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生命保険の基本的な仕組み(2)  

平準保険料方式

イラクに対する戦争はなかなか始まりません。始まるかどうかもはっきりしま せん。こうなると証券市場はいつまでたっても積極的な動きができず、ずるずる 下がる一方です。3月末決算を控え、銀行、保険会社、政府の総力をあげたPKO(株価引き上げ・為替円安化操作)が今週あたりから強力に実施されそうです。 こういう状況はヘッジファンドやその他投機家にとっては絶好のチャンスですからこれから3月末にかけての攻防からは目が離せません。  

それはさておき、前回から改めて始まった生命保険の基本的な仕組み、まずは 生命保険の保険料の決め方の話から始まったところです。

◇生保の保険料の決め方の種類  

生命保険の保険料は、現在では平準保険料(あらかじめ決まった保険料を保険 期間を通じて毎月、あるいは毎年支払う方式)が当然のようになっていますが、 必ずしもこの方式でなければならない、というわけではありません。  

被保険者間の公平を期すため、例えばここに40歳の健康な男性が100人いたと します。死亡保険金を共通に100万円として全員が保険に入るとします。一つの やり方は、毎年、その1年間の死亡に対してそれぞれ100万円を支払います。死 亡した人が1人だったら死亡保険金の総額は100万円、それを100人で割って1人 あたり1万円の保険料、死亡した人が2人だったら死亡保険金の総額は200万円、 それを100人で割って1人あたり2万円の保険料、という具合に計算して後から保険料を徴収する、という方法です。  

後にならないと保険料がいくらになるかわからないのは困るし、死亡した人が大勢いると保険料がとても高くなってしまうかもしれない、それも困る。という ことでもう一つのやり方があります。  あらかじめ年間の保険料を一人あたり1万円としましょう。保険料の総額は 100万円になります。1年間に死亡した人が1人だったらその100万円を全額死亡 保険金として支払いましょう、死亡した人が2人だったら死亡保険金の総額の 100万円を2人で割って1人あたり50万円の死亡保険金になります、という具合 に計算して死亡保険金を支払うことになります。  

保険料が変わらないのはいいけれど保険金をいくらもらえるかわからないんじ ゃ困るじゃないか、ということになりますね。

その上、保険料が変動するにしても保険金が変動するにしても、いずれにして も年齢が上がっていくとどちらのケースでも必然的に保険料が高くなる、あるい は保険金が少なくなる、これを何とかして保険料も保険金も変わらないような保 険制度ができないものだろうか、というのは当然誰でもが考えそうなことです。

◇年齢別死亡率に基づく平準保険料という方式  

そこで、頭のいいアクチュアリーが考えたのが、年齢別死亡率に基づく平準保険料という方式です。あらかじめ年齢別の死亡率を見積もっておき(保険会社が 支払不能にならないように若干の安全割増をそれに加えます)、一定額の死亡保 険金と一定額の保険料という前提で、保険期間の全体を通して予定される死亡保 険金の支払総額を計算します。それと同時に同じように保険期間の全体を通して予定される保険料の支払総額を計算します。その2つが一致するように保険金額 と保険料の相対的な比率(保険料率)を決めます。  

ここで注意してもらいたいのは、最初に紹介した2つのアプローチでは事後的 に実際死亡(率)を使って計算していますが、予定死亡率は必要ありません。予 定死亡率を使う、というのが味噌、ということになります。  

保険期間が長くなり、年齢につれて死亡率は増加しますので、平準保険料方式 では最初のうちは保険料が支払う保険金をはるかに上回ることになります。これ は保険期間の後の方で死亡率が高くなったときの保険金の支払に充てるためのも のですからちゃんととっておかなければなりません(責任準備金です)。この責任準備金が発生する、ということから、その資金を運用することにより利息が稼げるじゃないか、その分保険料を安くできるはずじゃないか、ということになり ます。この稼げると思われる利息を計算するために予定利率(ここでも当然保険会社が支払不能にならないように若干の安全割引をして予定利率を若干低めにし ておきます)が使われるわけです。  

最初に紹介した2つの方法の場合、同じような健康状態の同じような年齢の人が大勢いないと計算が成り立たなかったのに対し、平準保険料方式を使うことによって全体として被保険者が大勢いれば個々の年齢の被保険者がそれぞれ大勢い なくても計算が成り立ち、しかも公平な取扱いができる、これがこの平準保険料 方式のいいところです。  

このようにして生命保険の平準保険料という方式は予定死亡率・予定利率の使 用、責任準備金(積立金)の発生と一体となるものです。  

損害保険の場合、損害率は年を追うごとに高くなるわけでもないし、年々の掛 け捨てだから積立金も発生しない、そのため予定利率も必要ない、ということで 、生命保険の仕組みと損害保険の仕組みがここで大きく異なっていることになり ます。

チョット長くなってしまいました。今回はこれくらいにして、次回はもう一つ の要素である事業費(あるいは社費)について考えて見ましょう。         

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.linkclub.or.jp/~lax