【Inswatch】134 <2/24/2003>

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【3】代理店のための生命保険入門(23)            坂本 嘉輝

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生命保険の基本的な仕組み(1)

◇初心に戻って  

この連載も3年目に入り、当初、契約者から見た生命保険数理を考えたり、途 中から保険代理店を始めた実況中継をしたり、またその間、保険業界のいろいろ なトピックスに関してコメントしたりしてきました。  132号の保険業界随想(1)にも書きましたが、このようなことでは生命保険 入門とは言えない、ということで、業界関係のトピックスに関しては新たに『保 険業界随想』というタイトルで別途コメントさせていただくことになりました。  

ところで、ここのところ、当社はチョットマスコミづいています。2月8日に はオフィスの入っているビルの紹介で当社オフィスがテレビに出ました。また2 月19日には予定利率の引き下げ問題に関してフジテレビのニュース番組の中で、 生命保険の既契約者に予定利率の引き下げの影響について私が解説しているとこ ろを放送してもらいました。  

3月5日に発売予定の月刊『現代』(ニッカンでも週刊でもない、チョットお 堅い月刊のほうです。)4月号には、これまで何人かのお客様に保険のアドバイ スをする過程で出会ったいくつかの事例について解説する記事を書かせてもらい ました。  

この過程で、当社には私以外にもう一人、すごいライターがいることを発見し ました。この月刊『現代』の記事は私の名前で出してもらいますが、実はその大 部分は、もう一人のライターの手によるものです。  編集人の中崎さんと相談した結果、当社の代理店ビジネスの実況中継のほうは 今後彼が担当することになりました。ご期待ください。(次号で掲載予定)  

というわけで、もはやわき道にそれる手段を封じられてしまったので、この連 載では改めて、初心に戻って生命保険入門という内容の記事を書かせていただき ます。InsWatchの読者の中には生命保険についても詳しい方が何人もいますが、 そのような方はこの部分を読み飛ばしていただくか、あるいは私なりのどのよう な説明の仕方をしているか、ご覧ください。多分、普通の教科書には書いていな いようなアプローチをお見せすることができると思います。InsWatchの読者の多 くの方はそれほど生命保険に詳しくはない、どちらかといえば損害保険のほうが 得意な方が多いと思いますので、主にその方たちを対象に、生命保険入門、をあ らためて始めたいと思います。  

InsWatchのもう一人の編集人である石井さんとは、現在、『アクチュアリーの 書いた生命保険入門』というタイトルで、こちらは一般の消費者向けの生命保険 の入門書を出版すべく準備中なのですが、その材料なども適宜織り込みながら、 生命保険の基本的な仕組みについて解説します。

◇生保商品はどのように作られているか?  

まず最初は、生命保険という商品はどのように作られているんだろう、という 事から始めましょう。  

いま、生命保険業界は予定利率の引き下げ問題について大騒ぎになっています。 これは、過去に高い予定利率を使って設計した契約がいわゆる逆ざやとなって生 命保険会社の経営を圧迫しているため、それらの契約の予定利率を引き下げるこ とにより、逆ざや問題を解消し、生命保険会社の経営の健全化、安定化を図ろう、 というものです。  

損害保険の世界では、このような問題は起こっていません。損害保険のほうでは、例えば、9.11のテロによる損害保険会社の保険金支払い額が総額でいくらに なるのかとか、昨年の夏、ヨーロッパ各地に被害をもたらした洪水のための損害 保険会社の保険金支払い額が総額でいくらになるのかとか、その結果として一般 的に損害保険料率がどれくらい高くなるだろうか、とかいうことが話題になって います。アメリカのビルのテロによる損害、ヨーロッパの建物等の洪水による損 害が日本の一般の損害保険の料率に跳ね返ってくるわけですが、この違いは一体 何なんだろう、というところから始めましょう。  

生命保険は長期にわたる保障を一定の保険料(一度決められた保険料は原則変 わらない。配当などで安くなることはあっても、高くなることはない。)で保障 しています。そのために契約当初は保障に必要な額より多い保険料を払っていま す。そして、その保険料を計算する際、予定利率を使って保険料を割り引いてい ます。それに対して損害保険は基本的に1年間の短期の補償をするためのもので す。1年ごとに更新することはできるものの、更新後の保険料については何の保 証もありません(保険料が高くなるかもしれないし、安くなるかもしれません)。 会社の収益が悪くなって保険料の引き上げが必要になったら随時、保険料を引き 上げることができます。  簡単にいってしまえば、このような違いによるものです。  

それでは、このような違いは一体どのようにして生まれてきたものなのでしょ うか。そして、その違いによって保険会社の事業の性格がどのように違ってくる ものなのでしょうか。次回は少し歴史をさかのぼって、この辺りを考えて見まし ょう。        

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.linkclub.or.jp/~lax