【Inswatch】98 <6/17/2002>

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【9】代理店のための生命保険入門(15)            坂本 嘉輝

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代理店委託契約の不平等性  

ついにサッカーのワールドカップが始まってしまい、日本が始めて勝ち点を挙 げた、何時初めて勝てるか、予選突破はできるか、とか、また、入場券の販売の 不手際とか、世間の目がサッカー一色になっています。  

おかげで、外務省の不手際や防衛庁のプライバシー問題、官房長官の問題発言 など従来であったら閣僚の首が飛び、内閣自体も吹っ飛んでしまったかもしれな いような話もすっかり影が薄く、ああ、またか、と、どうでも良いような扱いで す。

◇生保決算、ネガテイブ情報、ポジティブ情報  

そんなさなか、生保の国内社大手が3月末決算を発表しました。(大手社だけ が発表したのではないのですが、やはりどうしても大手社(のうちの何社か)の発 表は注目されます。  朝日生命の決算内容は、やはりかなり悲惨なものでした。  

サッカーの試合を見ながら大手各社のホームページを開き、決算の記者発表資 料を開いて、主なページをプリントしていたのですが、朝日生命については、 (ホームページの上の方にあったので) 間違えて『平成13年度決算(案)のお知 らせ』というのを開いてしまいました。全6ページにわたってカラフルなプレゼ ンテーション画面を使って、成長力(新契約は対前々年度比141%の伸び、で もどうして前々年度比なのでしょう)、収益力(基礎利益は逆ざやをカバーした上 で1,064億円の利益)、健全性・リスク対応力(基金の総額が1,000億円から2,500億 円になった、株式は約45%削減した、ソルベンシーマージン比率は417.6%と、 基準である200%の倍以上ある)、等々、すばらしい数字が並んでいます。  

ここに出ている数字自体はうそではないのでしょうが、実態からはかなりかけ 離れた印象を与える資料になっています。  

この資料は、多分お客さんに、朝日生命が健全で安心できる会社だ、というこ とを示すために外務員さんたちによって使われるんだろうな、そして何より、外 務員さん自体を安心させるために使われるんだろうな、と考えると、これでいい んだろうか、という気がしてきます。  

コンプライアンスに関して、他社の誹謗中傷をしてはいけない、といって、他 社の決算の数値のうち、一部のネガティブな情報だけを示してはいけない、とい うことになっていますが、自社の決算の数値のうち、一部のポジティブな情報だ けを示し、あるいは情報をいかにもポジティブであるかのような形で示してお客 さんを誤認させるような行為はコンプライアンス違反にはならないのかな、と思 いました。  

各社の決算の概要については、また改めてまとめてみたいと思います。

◇代理店委託契約書の問題性  

ところで、代理店ビジネスの方ですが、遅々として進んでいます。  

代理店登録も終わり、各社の営業の人にお願いして、各社商品や保険販売の基 本についての勉強会が始まりました。  

代理店登録するときにはあまりジックリ検討する時間が取れず、各社の担当者 の持ってきた代理店委託契約書に無条件でハンコを押していたのですが、この際、 各社横並びで改めてきちんと読んでみました。  

基本はほとんど同じですが、会社により、表現の仕方や細かいところがかなり 違います。ジックリ読んでみて、やっぱり、と思ったのは、契約書といいながら、 保険会社と代理店とで、かなり不平等な契約になっていることです。  

問題が起こったら保険会社はすぐに契約を解約することができ、将来の手数料 の支払いはしない。代理店が守らなければならない義務はこれこれ。保険会社の 一方的な権利はこれこれ。代理店は悪さをするかもしれないので、それに対して 保険会社を守るためにきちんと契約書に規定しておかなければならない。保険会 社は悪さをしないので、悪さをしたときに代理店をどう守るか、などという規定 は必要ない。といったあんばいの契約書です。  

代理店が力をつけ、このような不平等な契約書を改め、公平な立場での契約を 締結するようにしなければ、保険販売の健全な発展は期待できない、と思うので すが、現実には中々難しいだろうな、と思います。  

何しろ、この契約書のベースとなっている保険業法自体が、保険会社は悪さを するかもしれないけれど、国のお役人は悪さをするはずがない、という大原則の 下に作られているのですから。そのため、保会社や募集人、代理店の不法行為 に対する罰則規定はそれこそ馬に食わせるほど書いてあるのに、監督当局に対す る罰則規定は何一つない、という法律ですから。                    

(生命保険アクチュアリー)