【Inswatch】94 <5/20/2002>

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【8】代理店のための生命保険入門(14)            坂本 嘉輝

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乗合代理店としてスタートの実況中継

◇乗合の資格要件で苦労  

さて、先月報告したように、3月に無事子会社を有限会社として設立し、代理 店登録しました。  当初勘違いして、募集人が2人いれば乗合ができると思っていたのですが、う ち一方は専門課程の試験合格の資格が必要だということがわかりました。私もそ の昔、当時の初級、中級、上級の試験は全て終えていますが、一旦保険会社をや めてしまうと、その資格は再度取り直さないといけないということのようです。  

仕方がないので当面は1社専属でのんびりやろうかと思いつつ、念のために何 か良い手がないか相談したところ、辞めてから2年以内であれば一般課程の再受 験、合格を条件に過去の専門、応用の試験合格が生き返るというルールがあるこ とを教えてもらいました。  

この話を聞いたのが私がアイエヌジー生命を辞めてちょうど2年と数日たった 時で、私の昔の合格の復活は駄目になってしまいました。幸か不幸か会社にアイ エヌジー生命を辞めてまだ1年半の人がもう1人だけいました。当初彼は代理店 の方には参加しない予定だったのですが、急遽彼にも一般課程試験を再受験して もらい(彼も私も無事合格しました。)、何とか滑り込みセーフで乗合代理店ス タートの要件を満たすことができました。

◇乗合先の選定  

保険会社は当初、アリコ、アクサ、アイエヌジー、ピーシーエー、スカンディ ア、ニッセイ、東海あんしんの7社を考えていました。代理店ビジネスをやると いうことと、私のこれまでの付き合いでどうしてもカタカナ会社が多くなります。 漢字会社とひらがな会社からも、それぞれ代表的な1社を入れようと思っていま した。  

知り合いをあたって、東海あんしん以外の6社は営業の人とコンタクトが取れ ましたが、東海あんしんだけは適当な知り合いがいなかったので、これは後回し にして、6社にしました。  

代理店契約の手続きをしてもらう過程でニッセイだけすんなりと行かず、6月 にずれ込んでしまうことになりました。子会社を作って代理店をしようとしたの が、ちょっと引っかかって社内的な手続きで時間がかかってしまったようです。  

結局、私ともう1人が3月25日に一般課程試験を受験、合格して4月初めに個 人代理店として代理店登録。これと並行して法人の方の代理店登録のための手続 きを進め、4月11日の精査会を経て4月15日に個人代理店から法人代理店に移行す る形で登録。個人代理店はピーシーエー専属だったものをこの時同時にピーシー エーを含む5社乗合代理店として登録しました。  

ニッセイさんはこのスケジュールに乗ることはできませんでしたが、その後社 内手続きも何とかうまく行き、5月の精査会を経て6月には登録できそうです。  

説明してくれる内容も手数料の説明から始める人、商品の説明から始める人、 会社(あるいは親会社を含めた会社グループ)の説明から始める人と様々です。 とまれ、代理店と募集人の登録が終わり、募集人証も届けられつつあり、いよい よ代理店ビジネスが始まります。

◇テキストに見る大数の法則の説明の誤り  

なお先日コメントした一般課程のテキストの問題ですが、1つは大数の法則の 説明です。テキストには、『このように数少ない経験では何の法則もないような ことでも、数多くの経験を集めると、ある決まった傾向が現れてきます。(中略) これを大数の法則といいます。』と書いてあります。これは大数の法則の説明と しては明らかに間違っているものです。一体どうしてこういうことになってしま ったのかと思って、他のさまざまなもっと上級のテキストもあたってみたのです が、残念ながらほとんどすべてのテキストで同様の説明がされていました。残念 ながら生保関係者でアクチュアリーとか、その他統計関係の仕事をしている人以 外は、殆ど全ての人がこのように誤った理解をしているのかも知れません。  

更に言えば、一般に生命保険を成立されている原理の1つが大数の法則だとい うことになっていますが、厳密に言うと実はこれも間違いです。殆どの会社の場 合、大数の法則を機能させるだけの契約件数を持っていません。現実に保険をビ ジネスとして成立させている原則は、危険論という理論なのですが、これはエイ ヤっとばかりにとことん大雑把に言ってしまうと、大数の法則の一部、あるいは 拡大版と言えなくもないので、これはこれで良いかも知れません。

◇現実とかけ離れた相互会社と株式会社比較の記述も  

もう1つの問題点は保険会社の相互会社と株式会社の比較をしている所で、 『株式会社』の場合は契約者は保険の契約関係だけで、会社の運営には参加しま せんが、利益金の殆どを契約者配当として返還すること、契約者本位の経営をす ることなど、保険事業の性格から相互会社と比べても殆ど違いなく運営されてい ます。』と書いてあります。  

これは大昔の日本社20社体制で16社が相互会社、4社が株式会社だった時の話 です。その4社ももはや全て経営破綻したか、する前に外資に買収されてしまい、 また、その後の外資や損保子会社の新発生保の株式会社が多数生まれている現状 からすると、かなり現実からかけ離れた表現です。  

一般課程のテキストにこのような記述があると知っただけでも、今回の受験は 意味があったかも知れません。                  

(生命保険アクチュアリー)