2013年 11月 25日  inswatch Vol. 695

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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アイエヌジー生命の売却  

アイエヌジー生命の売却、あるいは株式公開がちょっと延期になったようです。11月6日にアイエヌジー生命から「INGグループによる日本のアイエヌジー生命に関する発表について」というリリースが出ています。

もともとINGグループから保険の部分を切り離して売却するなり一般公開する なりする、という方針はINGグループとオランダ政府・EUとの間で決まっていたことで、アジアの保険事業のほとんどは既に売却されてしまっていたり、それが決まっていたりするのですが(韓国のING生命も今年中に売却が終わる予定のようです)、日本のアイエヌジー生命はうまく話がまとまらないようで、期限の2013年末までには決着できそうもないということで、2015年末まで締切を延ばしたということのようです。

アイエヌジー生命のリリースでは殆ど何が書いてあるのか理解不能なので、同じく11月6日にオランダで発表されたリリースを読み、そこで参照されている、同日に発表されたINGグループの2013年第3四半期のリポートを見ると、ようやく内容がわかります。

アジアのINGグループの保険・資産運用部門は2013年12月までにその50%以上を売却する予定で、INGグループの他の事業とは切り離して「売却して切り離す予定のビジネス」として管理されていて、日本のアイエヌジー生命以外は順調に売却が進んでいたのですが、日本のアイエヌジー生命だけはうまく行っていないため、一旦その「売却して切り離す予定のビジネス」からはずし、2015年末までに50%以上、2016年までに100%売却する予定のヨーロッパの保険・資産運用部門と一緒にして、売却先を探すことになったようです。

そのために日本のアイエヌジー生命の事業を、法人営業のCOLIビジネスと塩漬けになっている変額年金のビジネスに分け、変額年金の方は2013年第4四半期と2014年第1四半期に合計して10億ユーロ(1,300億円)分の損を計上して、負債の水準を適正な水準まで引上げることにしたようです。

変額年金のビジネスはかなりの額をオランダのING再保険に出再しているため、現状ではそのままでの売却がうまく行かないということのようです。そのために一旦適正な水準にバランスシートを修正した上で、改めて売却先を見つけようとしているということのようです。

ここら辺の修正はオランダで行なっているグループの会計での話なので日本の会計には影響がなく、増資等も行なわないようです。

確かに1,000億円超の大穴のあいたビジネスを売却するのは難しいんでしょうね。これは全て既に塩漬けになっている過去の変額年金のビジネスの話ですから、将来に向かっての実績には関係ありません。

また変額年金も2019年にはほぼ90%の負債にケリがつく(積立期間が終わって多分ほとんど解約される)ということのようです。

アイエヌジー生命の法人営業(COLI)のビジネスはこれまでずっと順調で、営業成績も素晴らしく利益率も高く、収益と資本形成に貢献していると明確に書いてありますから、これまで長くその反対のことを言われていたアイエヌジー生命の法人営業を支えていた人達(その多くは既にアイエヌジー生命を去ってしまっていますが)も「ソレミタコトカ」と思うかも知れません。

私もINGの事業を離れてもう12年半になりますが、やはりその昔席を置いた会社のことなので、今でも時々気になります。
(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp