2013年 10月 28日  inswatch Vol. 691

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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認可前の共済事業と準備金計算

アメリカの予算と債務上限の話、とりあえず時間稼ぎのアディショナルタイムの導入で、何カ月か先送りになり、やれやれですが、年が明ければまた同じ騒ぎが繰り返されるんでしょうか? 下手をすると今度は3月末の決算期にぶつかってしまい、大変なことにもなりかねませんから、できるだけ早めに決着してもらいたいものです。

ところで、公益法人改革法に伴う社団法人・財団法人の一般社団法人・一般財団法人への移行の手続きも時期的にそろそろ締めきりです。締めきりが終わったら認可特定保険業者がどれくらいの数認可されたか分かるかもしれません。

認可特定保険業者になる前の公益法人の共済制度、あるいはもっと広く少額短期保険業者になる前の無認可共済についても、保険制度として保障内容や保険料は決まっていますが、約款や事業方法書、算出方法書などは必ずしもきちんとそろっているわけではありません。特に、保険料計算の基礎や計算式、責任準備金の計算方式などあいまいなままで事業をしている(いた)ところもかなりあります。

少額短期保険業者の登録や認可特定保険業者の認可申請ではそのあたりをきちんと整理することも当社のようなコンサルティングサービスの仕事になります。

少額短期保険業者や認可特定保険業者は保険業法の規定による保険事業ですからそれも当然なのですが、認可特定保険業者にならない公益法人の共済事業についても、一般社団法人・一般財団法人への移行の手続きをきちんとするために、その保険事業の責任準備金を計算して事業の財務状況を確認することが必要になることがあるようです。

そのような場合でも責任準備金、という名称はともかく、何らかの形で準備金を負債として計上していることが普通ですから、できるだけそれに合わせる形で計算基礎率、計算方式を用意して計算する、ということが必要になります。これはアクチュアリーとしては非常に面白い仕事になります。もっとも、その共済がお金持ちならそれなりの報酬が貰えますがお金持ちでないときは相手の払える範囲内の報酬で仕事を引き受けることになります。

私が経験したのは、ある事業者団体の死亡保障と火災保険を組み合わせた共済制度ですが、保険料は男女・年齢によらず一定で、保障の額も一定、保険期間は1年ですが毎年更新できるので、掛け捨ての1年保険と考えることもできますが、終身保険と考えることもできます。とはいえ、高齢になって引退して事業者団体を脱退するときはその共済からも脱退することになるので必ずしも終身保険というわけでもありません。

将来に備えて従来から準備金は積み立てているものの、負債を評価して積み立てている、というよりは毎年の収支残をそのまま留保している、という形の準備金になっています。

このような状況で、現状積み立てている準備金とあまり差異のない責任準備金を保険数理的にきちんと計算する、というのはパズルを解くような、なかなかエキサイティングな仕事です。

当社のコンサルティングにはこのような仕事も含まれています。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)