2013年 9月 30日  inswatch Vol. 687

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

消費税の引き上げと募集手数料  

アベノミクスもオリンピックの2020年東京開催が本決まりとなり、いよいよ景気回復が本格化しそうです。震災の復興工事もいよいよ本格化し、宮城の地元では職人を確保するのが難しくなっているようです。

福島の原発でもいよいよ国が前面に出て遮水壁工事その他いろんな工事をするようですからここでも人が動き、金が動き始めます。東京では早くもオリンピックに向けていろんな工事の企画が始まっているようです。

人が動き、人が足りなくなると次は給金が上がります。ものが動き、金が動くようになると景気が良くなります。そこでいよいよ消費税が上がります。

今回の消費税の引き上げでも具体的なところで対象品目を制限しようか、という話もありますが、現状でも消費税のかからない売買があります。誰かに頼んで働いてもらうのも、人を雇って給料を払うと消費税はかかりません。どこかの会社に頼んでその会社の人に働いてもらうとその会社に対する支払いには消費税がかかります。      

保険業では保険料には消費税がかかりませんが、代理店手数料(募集手数料)には消費税がかかります(とはいえ、手数料を支払う相手が消費税の課税事業者でなければ消費税を払わなくてもいいんですが)。

保険会社では手数料に関する消費税の取り扱いについていろんな工夫をしています。

消費税の課税事業者がほとんどいないような場合には、手数料は原則として消費税を上乗せせず、一部消費税の課税事業者になっている代理店に支払う時だけ消費税を上乗せして支払う、とか、消費税の課税事業者の方が多い場合にはめんどくさいから手数料に一律に消費税を上乗せして支払う、とか、それも面倒なの で最初から手数料率を消費税込みの率として計算してしまう、とか。

いよいよ消費税が上がることになり、それに伴ってさらに少なくとももう一度消費税の引き上げが見込まれる、ということになると、保険会社ごとに対応策を考えなければなりません。

一般の会社では仕入れの時に支払った消費税と、売上の時に受け取った消費税とで、受け取った消費税の方が多いのでそこから支払った消費税を差し引いたものを、お客さんから預かった消費税だ、ということで最終的に納税する、ということになるのですが、保険会社の場合、売上の方で消費税を受け取れないので仕入れの際に支払う消費税は回収できないことになり、一方的なコスト増、ということになってしまいます。

このコスト増の分、保険料の引き上げにつながるのか、あるいはその分、手数料を実質的に引き下げることになるのか、注目ですね。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp