2013年 8月 26日  inswatch Vol. 682

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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かんぽ問題への一視点

先月もちょっと触れましたが、かんぽ生命とアフラックの提携について、ちょっとコメントします。

かんぽ生命はしばらく前までは郵政省の簡易保険局の保険事業ですから、国営の保険事業です。その後、民営化の途上ですが、まだ国が実質的な株主になっていますから、完全に民間会社になったわけでもありませんし、完全に民間会社になるかどうかもはっきりしません。以前からの郵便局のサービスを引き継いで全国的な地域サービスの継続もやめるわけにはいかないため、なおさら純粋に民間の保険会社になるわけにはいきそうもありません。

また、全国的な地域サービスのために、どうしてもコストが高くなるのが当然です。国営であれば国の財政負担ということも考えられますが、民営化する以上、そんなわけにもいきません。コストが高ければその分商品も割高になるので利益水準も低くなるのが当然です。

簡易保険が国営の保険事業だった、ということで、かんぽ生命は日本の保険会社としては規模的に(世界的にも)最大の保険会社になってしまっていますが、これは必ずしも好ましいことではありません。

もちろん、既契約を保全し、また今後ともサービスを継続するためにも赤字の垂れ流し、ということでは困ります。そんなことでは国の財政負担が必要になってしまいます。かんぽ生命が民営化の方向に進むのであれば、事業を継続できるだけの収益は当然必要となります。

生命保険の事業は新契約の獲得に多大のコストがかかります。逆にいえば、新契約の獲得をほどほどにしてすでに獲得済みの保有契約の保全に注力すれば、経営の規模の拡大は多少望めないとしてもコストが高い分を埋め合わせるのに十分な利益を見込むことができます。

そのため、全国的な地域サービスのためのコスト増を新契約の獲得をほどほどにすることにより賄っていき、事業の規模を適正な水準まで縮小していくことが望ましい、ということになります。

そのためには今回のアフラックとの提携だけでなく、他の保険会社や金融機関との提携により、サービスを充実させつつ、必ずしも高収益を見込まない経営が必要だ、ということになります。

とはいえ、事業経営では規模の縮小というのは規模の拡大に比べてはるかに難しい経営課題です。今後のかんぽ生命、及び日本郵政グループの経営手腕に注目したいと思います。

かんぽ生命や郵貯銀行の規模がそこそこ縮小していけばアメリカをはじめとする諸外国からの不公平だというプレッシャーもその分緩和していくでしょうから、その意味でも望ましい方向性です。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp