2013年 3月 25日  inswatch Vol. 660

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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キプロスで気をもむ決算直前状況

いよいよ今週で平成24年度も終わりです。
決算を前に、3月のマーケットの状況は気にかかるものですが、とりあえず今のところ大丈夫そうですね。

先々週に突然起こったのが、キプロスの銀行預金に対する課徴金の話です。キプロスの銀行危機を救うため、EUは100億ユーロの支援をすることにしましたが、そのための条件として、キプロスの銀行の預金者から58億ユーロの課徴金を取り立てることを要求しました。銀行が破たんしてもある程度の預金は保証する、というのが普通なのにこれは銀行が破たんもしていないのに強制的に預金の一部を国が取りたてる、ということですから、とんでもない話です。

そのために緊急に作られた法案はキプロスの国会で否決されてしまいましたが、政府の提案した法案に対して賛成票を投じた議員が一人もいない、という驚くような結果です。

EUとしては裏付けもなく高金利を提供していた国の銀行を救うために自国の国民の税金を無条件で使うことはできない、特にその高金利でおいしい思いをしていたのがロシアの金持ちだ、ということになると、預金者にかなりの負担をさせないと説明がつかない、ということなんでしょうが、その預金者の中にごく普通のキプロスの国民が大勢いる、ということになるとそう簡単に負担を強制することもできません。

とりあえず今日(3月25日)まで期限を切って解決策を出すことになっていますが、すぐには解決ということにはなりそうもありません。EUの方が妥協して100億ユーロの支援をしたとして、銀行の窓口を開けたとたんに預金の引き出しが殺到するでしょうし、そうなったら100億ユーロではとても足りない、ということになるでしょう。だからと言って100億ユーロの支援をしないでキプロスを破たんさせたら次にどこで何が起こるのか誰もわかりません。こんなことになるんだったら最初から無条件で支援していた方が良かったかもしれませんが、そんなことを今更言ってみてもはじまりません。とりあえず時間稼ぎをしている間に4月になってしまう、ということでしょうか。

いずれにしても仮に急激な円高になったとしてもあと1週間ですからなんとか決算は大丈夫でしょう。

日銀の総裁が白川さんから黒田さんに代わり、日銀が債券を際限もなく買ってくれるかもしれない、という期待でまたもや長期金利が下がって国債の値段が上がってますから、決算の方は円高の影響も多少は緩和されます。

でも、ユーロにしてもドルにしても基本的な問題は何も解決していませんからいつまた円が急に高くなるかわかりません。また、景気の回復により長期金利が上がっても不思議はありません。こうなると円高による外貨資産の目減りと金利上昇による国債等の債券価格の下落のダブルパンチですから、アベノミックスによる景気回復も生保をはじめとする金融機関の決算への影響ということでは注意深く見ていく必要があります。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp