2013年 1月 28日  inswatch Vol. 652

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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値上げ見送る日本生命の決断と波紋

遅まきながら、新年明けましておめでとうございます。

さて、先月号で生保の予定利率の引き下げの話をしました

去年の10月の段階で国債利回りの水準があまりにも低かったので、標準責任準備金を計算するための標準利率がこの4月から引き下げられることになり(この標準利率の計算方法は法律で決まっています)、この標準利率の引き下げにともなって保険料計算用の予定利率も引き下げられ、保険料が引き上げられる、というシナリオです。

しかし、その後の総選挙で自民党・公明党の連立が勝利し、安倍さんが総理大臣となり、『アベノミックス』への期待から心理的にはかなり景気の見通しが良くなっています。何とも先の見えない民主党の野田さんのころとは様変わりの様相です。日銀も政府に協力して正式にインフレを目標とすることになりました。

しばらくすれば景気の回復がはっきりしてきて金利も徐々に上がってくるような気がします。政府も予定通り消費税を上げるためにも是非ともそうなるように持っていかなければなりません。

こんな中、逆に金利を引き下げて保険料を値上げする、というんですから、世間的にはなかなか理解されなさそうですね。

そこで、標準利率の計算方式を変更して、(今度の4月には間に合わないけれど)来年の4月からはまた標準利率を引き上げ、保険料を引き上げよう、という話が金融庁の意向として報道されたと思ったら、今度は日本生命が、標準利率が引き下げられても保険料の値上げをしない、という話が出て来ました。正式には、一時払いの保険と長期の定期保険の予定利率は変える、という発表ですが、要するにそれ以外の商品は予定利率を変えませんよ、ということのようです。

確かに、1年後にまた予定利率を引き上げることがほぼ確実なら、たった1年分だけ予定利率の引き下げをはしょったとしても日本生命の財務の体力からすれば大したことはありません。保険料を上げたり下げたりする費用を節約できることの方がメリットが大きいかもしれません。

でも、業界のリーダー会社にこんなことをされてしまうと、日本生命ほどの財務の体力のない他の会社はどうしたらいいんでしょう。なかなか悩ましいところです。

政権も安定し、いよいよお待ちかねの相続税の引き上げ(控除の引き下げ)も実現しそうです。死亡保険金の控除を圧縮する話はなくなったようです。生命保険もますます大変ですね。

ということで、今年もはじまりました。今年もよろしくお願いいたします。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp