2012年 10月 29日  inswatch Vol. 639

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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ライフネット生命の代理店手数料率の開示

ライフネット生命が代理店手数料率を開示した、ということでちょっと話題になっています。

そのライフネット生命の開示した内容は、一律月払保険料に対して7.5%、最長5年(60ヵ月)の支払い、ということです。

その資料では、ニュヨーク州保険法では手数料の開示が義務付けられているので(日本では普通手数料は開示しないけれど)ライフネット生命も開示することとした、という解説がなされています。

ニューヨーク州の保険法の手数料開示義務というのは(ライフネット生命の社長の出口さんの説明によると)募集人に対する開示義務(募集人が契約者に対して開示する)ということですから、ライフネット生命のやった、保険会社が一般に対して広く開示するというのとは、ちょっと話が違うんじゃないかなと思いま すが。

ライフネット生命では募集人あるいは代理店が開示しないから、代わりに保険会社が開示する、と考えているんでしょうね。

この7.5%の水準ですが、以前開示したライフネット生命の付加保険料の水準は、
 
純保険料×21.2%+250円 あるいは        
  営業保険料×17.5%+206円    
となっています。このうちの7.5%が代理店手数料ということなのですが、これがどう関係するのかという説明はありません。

ライフネット生命のいつものことなんですが、今まで「手数料」という言葉を使い、付加保険料のことなのか代理店手数料のことなのか曖昧にしておいて、今度は「代理店手数料」という言葉を使い、これが手数料とどう違うのか、内訳なのか別枠なのか、という説明もありません。7.5%の所は「代理店手数料率」と書いておきながら、支払期間最長5年間の所には「手数料」としか書いてありませんから、これが「代理店手数料」のことかどうかも曖昧にしています。

どうもライフネット生命には「言葉使いを曖昧にする」という文化があるのかも知れません。

私は手数料の開示に反対しようとは思いませんが、手数料だけ開示してみてもなぁ!、と思ってしまいます。

というのも、生命保険会社は代理店手数料という名目以外でも、いろいろなお金を代理店に払っているケースがあります。特に大型の有力代理店にはプラスアルファのボーナスをつけたり、販売奨励金を渡したり、広告宣伝費としてお金を払ったり、あるいは契約成績が優秀だとご褒美に旅行に招待したり、様々のことがあります。

代理店手数料率自体も保険種類によって変わったり、保険期間によって変わったり、代理店の成績によって変わったり、きめ細かいコントロールをするのが普通です。

ライフネット生命ではそういうことは何もなしで「代理店手数料だけ」しか払っていないということなのか、追加的なお金は単純に保険料の何%という風に書けないので省略したのかわかりませんが、この開示だけじゃあ何もわかりません。

保険料が安いのは「付加保険料が安いからだ」の延長線上に、付加保険料が安いのは「代理店手数料が低いからだ」と言いたいのかも知れませんが、そうすると、じゃぁ実際に支出してる事業費は何であんなに多いんだ、という議論にもなり兼ねません。なかなか面白い開示です。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp