2012年 5月 28日  inswatch Vol. 617

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「保険業法施行令等の一部を改正する政令(案)」等の公表について

2012年3月期の決算が発表されました。

予定通り、3月末の株高、円安によりとりあえずはなんとかいい決算だったよ うです。とはいえ、ギリシャ危機、ユーロ危機はまだまだこれからが本番ですか ら来年の3月の決算はなかなか大変そうです。

で、決算の話はもう少し時間をかけてじっくり見ることにして、今回は別の話を。

5月23日に『「保険業法施行令等の一部を改正する政令(案)」等の公表について』、という記事が金融庁のホームページに載りました。これは3月30日に「保険業法の一部を改正する法律」が成立したのを受けて、その具体的内容を政省令の形で規定し、一応パブリックコメントにかける形にしたものです。

あまり大きな変更はないのですが、「保険会社がグループとして保険事業を展開するために色々やりにくい所をやり易くする」ということと、「少短業者の保険金額の上限に関する特例措置を延長する」というのが主なポイントです。

最初の話の中身は、
(1)日本の保険会社が外国の保険会社を買収する時、その買収される保険会社が持っている子会社が日本の保険業法では子会社であってはいけないような場合にも、その状況を解決するのに5年位は猶予が与えられるという話。
(2)大きな会社を買収しようとすると大金を払わなくちゃならなくて、それは資産運用として考えた時、一ヵ所(その買収しようとする会社)に資産の大きな割合を投資することになるので運用リスクが高まってしまうけれど、それは通常の資産運用ルールの例外として認めようという話。
(3)買収や現地法人化に伴って保険契約の移転をすることが必要になった時、それをやりやすくする話、の三つです。

この三番目の話は、たとえば外国保険会社の支店形式の保険事業を現法化して 日本の株式会社にするような場合、これまでのルールではたとえば新しい会社で免許を取って4月1日から営業を始める場合、元の支店の方は4月1日から営業を停止し、だけど契約はそのままその支店に残って保険料の請求や保険金の支払はそ のまま続けて、2ヵ月ないし3ヵ月くらい経った所でようやく契約を包括移転して新しい会社に一本化するという形でした。これを新しいルールでは新しい会社の営業が始まるまで前の支店が営業を続けていて、新しい会社が営業を始める4 月1日と同時に契約を移転して、以後すべての事務を新しい会社で行なうことができるようにする、ということで、手続きが非常にすっきりします。私も昔ING 生命で現法化を経験していますから、この面倒な手続きは良く知っています。

もうひとつの少短業者の保険金額の制限の方は、少短業者というのは「少額短 期」という名前どおり、保険金額がかなり小さく抑えられているのですが、少短制度が始まる前からの契約者については、一気に保険金額を引き下げるのは忍び ないので、一定の期間・一定の額までは金額の上限を緩めようという特例があり、それが来年の3月で切れてしまうのでその特例をさらに5年延長しようということと、あわせてそのような業者については新規の契約についても、保険金額の上限を少し緩める特例を設けようということです。少短業者も収支が中々大変なので、少しでも収益が改善するよう少しずつ規制を緩めるように当局に働きかけているんですが、その一部が実現するということです。他にも1契約者あたりの被保険者の人数規制をやめて総保険金額規制にし て、ここでも総保険金額を大きくできるようにしよう、という変更もあります。3月30日に成立した業法改正にはまだ他にも項目があるんですが、とりあえず6 ヵ月以内に施行するもの(少短に関するものは来年4月からですが)について今 回規定した、ということです。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp