2012年 2月 27日  inswatch Vol. 604

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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金融庁が生損保会社の検査結果を格付け  

安が止まりませんね。ギリシャの債務危機がとりあえずちょっと先送りされた、とはいえ、長時間の議論の末のぎりぎりの決着で、終わった途端に新たに議論の対立が明らかになったりしていますから、解決とはほど遠い状況です。今はたまたま円高逆戻りの円安ですが、いつまた逆戻りの円高になるかわかりません。それによって3月末の決算がどうなるのか、予断は許しませんね。

そんな中、金融庁が生損保会社を格付けする、というニュースが出て来ました(金融庁2月23日発表)。  格付け会社は日本をはじめとして先進国の国債もAAAから格下げし、銀行等もどんどん格下げして金融不安の原因ともなっているので、もう民間の格付け会社には任せておけない、金融庁自ら保険会社の格付けに乗り出す、ということかと思ったら、どうもそういうことではなさそうです。

普通、格付け、と言ったら、財務状況の格付けで、ある会社がちゃんと借金を返すことができるか、とか、つぶれないでちゃんと利益を上げ続けることができるか、ということを評価します。

ところが今回の金融庁の格付けはこれと違って、保険会社に対する金融庁の検査結果を格付けする、というものです。

そのため、格付けの内容も、「経営管理( ガバナンス) 態勢」「法令等遵守態勢」「保険募集管理態勢」「顧客保護等管理態勢」「統合的リスク管理態勢」「保険引受リスク管理態勢」「資産運用リスク管理態勢」「オペレーショナル・リスク等管理態勢」と、コンプライアンス以外はすべて『管理態勢』についての評価です(コンプライアンスも「法令等遵守態勢」と、『管理』という言葉は入っていませんが、実質的に『管理態勢』の評価です)。

そのそれぞれの評価項目ごとに、『強固な管理態勢』『十分な管理態勢』『管理態勢は不十分』『管理態勢に欠陥がある、または、重大な欠陥が認められる』という4段階の評価を付け、それを今後の金融庁の検査のやり方に反映させる、というもののようです。

どんなに管理体制が整っていても会社が儲からなければどうにもなりませんし、管理体制はちょっと危なっかしくてもしっかり儲かってびくともしない会社の方が安心だ、ということもありますから、今回の格付けは財務状況の評価とはまる で違う評価、ということになります。

普通の格付けは格付け会社が対外的に発表し、それによって外部の第三者がその会社に投資したり融資したりの判断材料にする、というものですが、今回の金融庁の格付けはむしろその会社と金融庁だけの間の格付けのようです。

格付けの結果はその会社自体には通知する、ということですが、それを金融庁が対外的に発表する、とか、格付けを受けた会社自身がそれを対外的に公表するとかいうことは何も決まっていないようです。

契約者保護、という錦の御旗で消費者にもこの格付けを公表する、というのが本来的なあり方なんでしょうが、金融庁もそこまで踏み込むことができるのかど うか、まずは試しにやってみてから考えよう、ということのようです。

とりあえず案を発表して、パブリックコメントの手続きに入っています。締め切りは3月23日までです。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)http://www.acalax.jp