2011年12月 26日  inswatch Vol. 595

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

生保2番手グループ再編

ユーロ危機が着実に深刻さを増しつつある中、新たな不安材料として北朝鮮の権力継承の問題が急浮上しました。北朝鮮がこのまま長持ちするとはだれも思っていないようですが、北朝鮮がいつ、どのように崩壊し、その後始末のためにどの国がどれだけの財政負担をして、その利益を享受するのはどの国か、非常に興味深いテーマです。

ユーロ危機の方は、その対応策をめぐってEU加盟国がイギリスとそれ以外にわかれてしまって、いよいよEUの分裂のシナリオが見えてきてしまいました。

もちろん長い目で見れば、いずれにしても世界は一つになる方向にしか動かないようですから仮にここで分裂したとしてもいずれはまた一緒になる、ということになるのでしょうが。それはともかく、クリスマス休暇の中でユーロ危機のインパクトは増大を続けています。

日本では、大震災でいよいよ東京電力の実質的な財政破たんが実感されるようになっています。もちろん東京電力を破たんさせるわけにはいかないので、形としては実質国有化、という形で公的資金投入による救済になるのでしょうが。これも、原子力損害賠償法により賠償責任がないはずの東京電力に法律を無視して賠償責任を負わせている政府とマスコミが、それこそ青天井で賠償額を膨らませているのですから無理ない話です。ここに来てまだ来年の電気料金の値上げはけしからん、などという議論が出てきているんですから、冷静な議論ができるようになるにはまだまだ時間がかかる、ということなのかもしれません。

このような中、生保業界は相変わらずの銀行窓販でリスクを膨らませているようですが、年が明けるとジブラルタ生命とスター生命、エジソン生命との合併が行われます。またアリコ(メットライフアリコ)も4月には日本法人化する、ということです。新しい時代が始まる、ということでしょうか。

いまやプルデンシャル・ジブラルタグループとアリコ(メットライフアリコ)、アフラック(アメリカンファミリー)の外資系3社・グループは、規模的に日生・明治安田・第一・住友の日本社大手の4社に次ぐ2番手グループ(かんぽを入れ るとそれが1番手になりますから、3番手、ということになります)になってしまっています。それまでアリコが30年も頑張ったのにもかかわらず日本市場でようやくシェア数パーセントしか取れなかったことを思い合わせると、この変化には感慨深いものがあります。

その昔、日産生命が破たんしたばかりで、次はどこだ、とか、渋谷3社(4社)とか言われていた時代、まだ私はING生命にいたのですが、会社の新年のあいさつの中で、その当時危ない、と言われていた会社を皆まとめてINGで引き受けてしまってはどうか、などという話をしたことを思い出します。 

一社ずつでも大変な作業ですが、3社か4社まとめてやってしまえば却って手間がかからないかもしれない、という理屈ですが、残念ながらINGにはそれだけの意欲と覚悟がありませんでした。結果的にプルデンシャルが同じことをやってしまったことになるのですが、プルデンシャルのやり方はもっと賢くて、皆いったん会社を破たんさせてから引き受ける、ということになりましたからプルデンシャルにとっては一番有利なやり方になりました。その分、破たんした会社の契約者が割を食った、ということになるのですが、それも今となっては昔の話です。

INGもリーマンショックで、もはや昔のような勢いはなく、INGの名前もいずれは保険ビジネスからはなくなる予定です。  

と、年末でちょっと年寄りくさい思い出話になってしまいましたが、私の連載も今年はこれでおしまいです。一年間お世話になりました。

来年も不確定要素だらけの不安な一年になりそうですが、それはそれとして時代の変化を楽しみたいと思います。

みなさまよいお年をお迎えください。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)http://www.acalax.jp