2011年11月 28日  inswatch Vol. 591

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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ユーロ危機と生保の資産急増

ユーロ危機が次第に深刻さを明らかにしつつある中、平成23年度の生保各社の上半期の業績が発表されています。

よく見る時間もないので、とりあえず一番気になっている明治安田生命の報告を見てみました。やはり思った通りの状況です。

その話の前に、まずはユーロ危機の話ですが、マスコミではイタリアやフランスの国債の利回りが話題になっています。利回りが7%を超えるようになると危機的状況だ、というような話が何の説明もなく語られているのはかえって危険なように思います。

景気が好調で、過熱しそうな時は、金利がたとえば10%になることも別に珍しいことではありませんし、それが問題、ということもありません。今のヨーロッパ各国の問題は、景気がそれほど良くなく、今後の成長もあまり期待できないのにもかかわらず金利が高くなってしまう、というのは長期金利が将来的な成長の指標ではなく、信用リスクの指標になっている、ということを示している、ということです。ギリシャのように、元本が戻ってこない可能性を反映している、ということです。マーケットがそのように感じ、考えて、それを国債の価格に織り込みつつある、ということです。

で、ユーロ圏の各国が次から次に国債のデフォルトの可能性を示すようになり、また周辺の諸国も資金不足で支援を要請し始めている状況で、各国の金融機関や投信はあわててユーロ諸国の国債を売却しようとしています。

とはいえ、現在世界的にお金は余っています。国債を売却してもその代金を安心して運用できる手段はありません。金融機関でなければ余ったお金は借金を返すのに使っても、借金がなければそのままタンス預金にしておいても大きな問題にはなりません。しかし、金融機関にとっては余ったお金はなにがなんでも資産運用しなければならない、金利を稼がなければならない、というお金です。お金があるということはリスクが高い、ということを意味します。

そのような中、昨年から急激に資産を増やしているのが明治安田生命です。主として銀行窓販の一時払終身保険で資産が増えているようです。昨年の明治安田生命の好業績に刺激されて今年に入ってほかの会社も同様なことになっているかもしれません。いずれにしても明治安田生命の上半期報告の説明資料を見ると、『保険料収入、上半期業績としては合併以来の過去最高を更新』とか、『お客様の安定的な資産運用ニーズを背景に、引き続き一時払終身保険の販売が堅調』などという説明が目立ちます。

基金を500億円増加して純資産を増強させた、とはいえ、その分はもうすでに使いはたして純資産は3月末より60億円少なくなっています。それに対して責任準備金は1兆3千億円も膨らんでしまっています。資産の評価額がちょっと変わったたけで簡単に吹っ飛んでしまうようなものです。

バブルのころ、生保会社の資産がとめどもなく膨らみ続け、その結果いくつかの会社が破たんに追い込まれたことを思い出しています。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)http://www.acalax.jp