2011年10月 24日 inswatch Vol. 586
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保険ウオッチング 坂本 嘉輝
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厚生年金3号被保険者巡る誤解と混乱
ギリシャ危機というかユーロ危機、いよいよ切羽詰ってきた感があります。
いろいろ良いニュース、悪いニュースが報道されていますが、いずれにしても来るべきクラッシュのエネルギーを溜め込んでいるような気がします。
ギリシャ危機というのが、実はギリシャ・スペインの国の話ではなく、フランスやドイツの銀行の話だというのは、ようやくマスコミも報道し始めていますが、それは実はアメリカやイギリスの銀行の話だという所までは至ってないし、ましてや日本の生保の話だということにはなっていません。
このあたり芋づる式につながっているのは確かなのですが、どの位密接につながっているのか、どこかがこけたらどこまでどれだけ影響するか、ということになると途端に詳しい情報がなくなってしまって五里霧中、起ってみないとわからない、ということになるのでしょうが、あまり安心してもいられないと思います。
ところで厚生年金の3号被保険者(正しくは厚生年金の被保険者の配偶者としての国民年金の3号被保険者)、いわゆるサラリーマンの妻が「保険料も払わないのに年金を貰うのは不公平」だという誤解にもとづく言い分に、また混乱を広げるように「それじゃあダンナの払った保険料は半々にして、ダンナと奥さんがそれぞれ払ったことにしよう」などという珍妙な案が出てきました。
「誤解」を「誤解」だとしてきちんと問題を解決しなければならないのを、あたかも「誤解」を「誤解でない」かのように一応認めてその解決策を新たに作っても、事態が混乱するだけのような気がします。
実際この案を採用するとサラリーマンの妻はさらに有利になって、一層不公平だなどという意見も出ているようです。
ここで以前からちょっと不思議に思っていたのですが、厚生年金はただ乗り議論がよく出てきますが、健康保険については同じ議論がまるで出てきません。
どちらも給与比例の保険料で世帯単位で保障されるわけですから、厚生年金と同じように共稼ぎ世帯と専業主婦で不公平だという議論が出てきても良さそうなのに、そんな議論が出てこないのは、健康保険は掛捨てなのに対し厚生年金は積立て貯蓄だという性格の違いがあるからでしょうか。それとも単に気がついていないだけで、皆が気がつけばこれも大騒ぎになるんでしょうか。
(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp