2011年 9月26日  inswatch Vol. 582

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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生命保険会社の合併

生命保険会社の合併が発表されました。
損保ジャパンひまわり生命と日本興亜生命が合併してNKSJひまわり生命に、三井住友海上きらめき生命とあいおい生命が合併して三井住友海上あいおい生命に、という二つで、どちらも10月1日付の合併です。

これで、生損保相互乗り入れでできた損保系生保は東京海上、NKSJ、MS&ADの三グループに集約されたことになります。

元、損保系の共栄火災しんらい生命は富国生命の下に入ってフコクしんらい生命になっていますし、富士火災の子会社の富士生命は親会社の富士火災が元AIGのチャーティスのグループ会社になっています。

日本興亜生命もあいおい生命も今期の決算でほぼトントンのところまで来ていますから、すんなり合併できることになります。それにしても保険業法の改正により、生保・損保とも各社が競って損保子会社・生保子会社を作ったのはたったの15年前ですが、その後の環境の変化はすさまじいものですね。

今、生保各社の決算のまとめを見ているのですが、各社とも生き残りをかけて大変なようです。日本では1990年以来の失われた10年が20年になり、さらに続きそうです。アメリカもリーマンショックの後を受けていよいよ失われた10年が本格的になりそうで、さらにはヨーロッパはギリシャの財政危機をきっかけにさらに大きな失われた10年を始めようとしています。中国はまだまだ安定した成長にはなっていないようですから、やはりここはそろそろ日本がなんとかしないといけない時期なんですが、さてどうなることでしょう。

ところで、アクチュアリーというのは統計がある意味メシの種なんですが、その統計に関して奇妙な報道がいくつかありました。

一つは大震災で睡眠障害の人が4割以上、という報道なんですが、その中で震災で失業状態にある人の半分以上が睡眠障害だから早く何とかしなければ、という報道でした。この数字からすると、失業状態でない人でも半数くらいが睡眠障害になっているはずです。いずれにしてもそれまで住みなれた家とは違うところで寝起きしなければならないんですから睡眠障害は当然ありうる話です。もちろん被災者の生活再建を早くなんとかしなければ、というのはその通りですすが、だからと言って統計を無理やり勝手に自分の都合のいい結論に結び付けてしまう のはちょっと問題があります。

もうひとつが人工衛星が降ってくる、という報道です。確率3,200分の1、という数字で大騒ぎしていました。

この数字は地球の人口を全て屋外に適当な間隔で立たせておいて、そのうちの誰か一人に人工衛星のかけらが当たる確率が3,200分の1、ということで、誰にもあたらない確率が3,200分の3,199、ということですから、それこそ天文学的なほどちっぽけな確率で、非現実的な計算なんですが、そんな解説なしで確率3,200分の1、なんて言われると、何となく誰でも自分に当たる確率が3,200分の1、というように考えて、結構高い確率だな、などと考える人もいたようです。

まあ、マスコミはきちんとした説明をしないで騒ぎを大きくするのが仕事だ、と言ってしまえばそれまでですが、普通の人々がそんなマスコミに簡単に動かされるような状況、というのは統計でメシを食っている人間としては、それこそ3,200分の1くらいの責任があるのかもしれません。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp