2011年 5月30日  inswatch Vol. 565

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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保険会社決算と基準の変更の影響

2011年3月期の保険会社の決算がほぼ出たようです。

この中味の分析にはちょっと時間がかかるのでここではコメントできませんが、決算報告ではちょっと面白いことがあります。

保険会社のソルベンシーマージン比率の計算は2012年3月期から新しい基準に変更され、それにもとづいてソルベンシーマージン比率が現行のものの半分くらいになりそうだと言われていますが、今期の決算報告には現行のソルベンシーマージン比率の計算と併せ、来年以降の基準で今期の比率を計算したものも、参考資料として多くの会社で公表されています。

基準の変更の影響は会社によって異なりますから、どの会社が基準の変更によりどの程度影響があるか、見ることができます。その結果によって、これから来年3月に向けて純資産の増強(増資等)をどれ位することになりそうか、も興味があります。

東日本大震災の影響も、今期・来期の決算にまたがって注目です。もちろん東京電力やその他の電力会社の株価とか社債・貸付金の評価が決算にどの程度影響するか、も注目です。

昨年6月から金融庁は各保険会社に対して、「経済価値ベースの保険負債評価」の試算をしてもらっていましたが、その結果が当初3月に発表の予定がちょっと遅れ、5月24日に発表されました。

これは簡単に言ってしまえば、いわゆる「責任準備金の時価評価」というものです。

保険会社の決算で資産の方は時価評価になっているのに、負債の大部分を占める責任準備金の方は時価評価になっていないと、そのアンバランスがおかしなことを引き起こす。負債の方も時価評価すれば資産と負債の整合性が取れるということなんですが、実際の計算はかなり大量の計算をしなければならないので大変だということです。

これも計算の前提となる条件をどう設定するかで大きく変わる話ですが、とりあえず今回試行でやってみた結果は、現行の責任準備金とくらべてちょっとだけ(数パーセント)小さくなったというまぁ予想通りの結果ですが、この新旧の数字の比較を眺めるのも面白いかも知れません。

公益法人の共済や無認可共済を昔の形のまま継続できるようにする「認可特定保険業者」に関する法律・政省令その他の具体的な規定が、パブコメが終了していよいよ決まりました(5月10日)。これでいよいよ具体的な動きが始まるのでしょうか。

パブコメに寄せられた意見とそれに対する金融庁の回答、全部で29ページありますが、なかなか面白いものになっています。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp