2011年 4月25日  inswatch Vol. 560

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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大震災対応と生保決算動向

地震から1ヵ月半、原発の方はまだまだですが、それ以外は大分落着いてきましたね。

生保業界も損保業界も保険金支払請求をスムーズに行なうための検索システム等を用意して、照会に備えています。

生保業界の方はこの震災で保険金の支払額の見込みが2,000億円程度だと報道されていますが、だとすると2000年3月期の1年分の死亡保険金等の支払額、約3兆3,000億円と比べると大した額ではありません。

震災被災地の復興の作業はようやく緒についたばかりです。保険の営業ネットワークの担当者は当面既契約の保全処理・保険金請求の手続き等に忙殺され、新契約の手続きはかなり先、またかなり低調にならざるを得ないものと思います。

保険会社は現地営業チャネルの維持・支援のためにどのような対応をしているのでしょうか。それにより、会社の営業チャネルに対する考え方がわかるかも知れません。

4月に入り、各保険会社も3月末決算をまとめる作業に忙しいことと思います。

大震災にもかかわらず、3月末は株価も外国為替も国債利回りもそれほど大きな動きがなかったので、そこそこの決算ができたものと思います。むしろ生保業界としてはソルベンシーマージン規制の変更に向けて、自己資本の増強をいよいよ始めなければならないということでしょうか。

昨年6月から行なった負債の時価評価の試行も、何らかの方向性が出てくるのかも知れません。その当時金融庁は試行の結果の概要を今年の3月頃を目処に公表するとしていたのですが、まだ何も公表されていません。この大震災の影響でしょうか。今の所まだ公表の目処は立っていないようです。

この負債の時価評価も含め、保険事業に「保険経済価値規制」が本格的に導入されることになると、保険会社の決算対応もかなり大幅な変更が必要となります。

これも世界的な動きですからいずれにしても「いつかは」ということですが、その具体的な内容はまだ検討中ですから、なかなか悩ましい所です。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp