2011年 3月28日 inswatch Vol. 556
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保険ウオッチング 坂本 嘉輝
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大震災の生保への影響
3.11の大地震とその後の津波、原子力発電所の事故で、全てが様変わりになってしまいましたが、二週間たって、首都圏ではようやく生活も元に戻りつつあります。マスコミや評論家の先生たちも無責任に好き勝手にいろんなことを言い出しています。
この間、消防・警察・自衛隊・お医者さん・看護士さん等々、人の生死にかかわる人たちの活動には感激以外ありません。
私など、アクチュアリーという商売柄いつも死亡率がどうのこうの、という議論をしているのですが、この死亡率というのは個別の人の生死のことではなく、全体としての割合の率ですから、現実の人の生死には全く関わりありません。そのため、今回の災害でも、なにもしないで(できないで)見ているだけです。
現在、死者・行方不明者が3万人になりそうな勢いになっています。日本人の死者数は1年で大体120万人くらいですから、仮に3万5千人として、死亡率が3%程度上がる、ということになります。この比率は大して大きなものではありませんから、この程度であれば保険会社にとっては十分安全割増しの範囲内です。保険金の支払いに何の問題もありません。これが、大規模経営によるリスク分散の効果です。
これが県民共済になると、宮城県・岩手県・福島県の県民共済は地域集中型の事業ですから、収支は大きなダメージをこうむると思われます。とはいえ、多く の県民共済は皆で集まって再保険(再共済)をしていますから、それである程度はカバーできるはずです。どの程度の再保険になっているかはわかりませんが。
この大災害で、株価は大幅に下がり、国債の価格の方はあまり下がっていませんが、その代わり、為替がかなり円高に振れてしまいました。保険金の支払いで保険会社が大変だ、ということはなさそうですが、決算の方は保有資産の目減りで結構しんどいことになりそうです。とはいえはっきりした言い訳があるのでそれほど厄介なことにはならないでしょうが。
この災害で、国会がほとんど止まってしまっていますから、予算がどうなるか、税制改正がどうなるか、全く分からなくなってしまいました。とりあえず民主党はこれを昔のマニフェストを取り下げる絶好の口実にしようとしているようです。
どのような形で自民党と民主党が折り合いをつけるか、そろそろ議論が始まっている頃でしょうか。
ところで、昨年法律が成立している認可特定保険業者の制度については地震の当日、政省令や認可特定保険業者用の監督指針の案が金融庁のホームページに公開され、パブリックコメントの手続きに入っています。こちらの方は公益法人制度改革法による公益法人の新しい法人組織への変更手続きの締め切りの問題もあるので、待ったなし、ということです。
(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp