2011年 2月28日  inswatch Vol. 552

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「面倒な決算になる」生保の見通し

先月号でライフネット生命についてだけちょっと早めにコメントしましたが、残りの生保会社も12月末、第三四半期の決算を開示しました。きちんと見ているわけではありませんが、今期もなかなか面倒な決算になりそうです。

12月末の時点で見ると、今期も資産運用で、債券は含み益が増加、株式や外国証券では含み益が減少(あるいは含み損が増加)ということで、前年より投資収益が減っている会社が多いようです。

世の中はその後、不安定さを増すばかり、チュニジアで始まり、エジプト、リビアと波及している反政府運動はとどまるところを知らず、どこまで行くか、どんなスピードで事態が動くか、だれにも予測できない状況です。

これで損害をこうむる、負担を強いられるのは日本よりむしろアメリカやヨーロッパですから、その分、為替が円高になって外貨建ての資産運用は損失が膨ら みそうです。

今は皆がイスラム諸国に注目していてヨーロッパの問題がちょっと印象が薄くなっていますが、もちろん問題が解決しているわけではありません。いつまたこの問題が再燃してくるかわかりません。これも、外債・株式の損失につながります。

日本国内では相変わらずの民主党のゴタゴタです。今度の国会では予算案、予算関連法案、税制改正法案の行方が全く分からなくなってしまっています。民主党内では小沢さんも菅さんも、どちらも生き残りをかけて一歩も引かない構えですし、自民党など野党のほうは、そんな与党に愛想を尽かして、なにがなんでも解散・総選挙だ、と頑張っています。その結果は株価の下落と債券価格の下落です。

この前のS&Pによる国債の格付け引き下げは当座、それほど大きな影響を与えていないようですが、それでもジワリジワリと国債利回りが上がりつつあります。

今回のムーディーズは格付け自体は変えずに見通しだけ変えたものですが、S&Pの引き下げと併せ技で、さらに影響は大きくなると思います。

この格付けの変更は、3月末までに予算案その他の国会審議がどうなるかが問題ですから、それこそ3月末の決算と同時進行で決算の内容を変えてしまう事態が進行することになります。なんとも厄介なことです。

生保の契約も以前のように高額の死亡保険で山ほど死差益を稼ぐ、という具合にはいかなくなり、またこの低金利では利差益など期待できるわけはなく、そんな中で資産運用で評価損益が大幅に変動してしまうとどうにも決算のしようがなくなってしまいます。

いずれにしてあと1ヵ月、この1ヵ月は国内でも海外でもいろんな出来事のてんこ盛りになると思いますが、それが生保会社の決算にどんな影響を与えるだろうか、と考えながらニュースを見る、というのも面白いかもしれません。

それにしても、今回の税制改革の、相続税の改正は、生保の営業には影響甚大ですが、これが実際改正されることになるのかならないのか、はっきりしない、というのも困ったものですね。

来年からの生命保険料控除の変更の方はもうすでに去年の国会で税制改正が終わっていますので、その分の説明の準備はきちんとしておかなければなりません。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp