2011年 1月31日  inswatch Vol. 548

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保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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来年の生保業波乱だらけの年明け

2011年も波乱のスタートですね。

初場所も、圧倒的な強さの白鳳が先場所に引き続いてまたもや稀勢の里に負けて全勝優勝を逃し、連勝記録もまたやり直しです。

いよいよ通常国会も始まり、元自民党の与謝野さんを起用する、というウルトラCで現状打開を図った菅さんですが、与謝野さんが総すかんですね。民主党がマニフェストを放棄したのはもう誰の目にも明らかだと思うのですが、それを明確に発表しないと許さない、と野党のほうはがんばっています。そのために与謝野さんに三顧の礼で内閣に入ってもらって、それこそがマニフェストを放棄したことの何よりの声明だ、ということでしょうが、与党のほうはわからない振りで すね。

こんな状況で、格付け会社のスタンダードアンドプアーズが日本の国債の格付けを引き下げ、それに対して菅さんが『聞いてない』の代わりに『疎い』と言った、といって、相変わらず言葉尻を捕らえての大騒ぎです。

この週末はそんなことはもういい加減どうでもいい、とばかりにサッカーのアジアカップの日本の優勝でみんな大喜びです。最後の得点シーンは見事なものですが、今日だけでテレビで何回見せられたことか。

国債の格付けの引き下げもマスコミが大騒ぎするほどにはたいしたことはなく、為替も一瞬は円安になりましたが、すぐに戻っています。

しかし、この国債の格下げは今後徐々に効いてきて、また、これから国会で予算の議論が本格化し(というより議論が本格化しないままで時間だけが経過し)、予算案だけであれば何とか民主党の数の力で通すことができても赤字国債の発行のほうは国会を通らない、ということになると、国債価格の下落は避けられないでしょう。銀行、保険会社等金融機関の3月末決算はなかなか大変なことになりそうです。

とはいえこれも、もう少し長い目で見れば長期金利の上昇は必然的に短期金利の上昇を伴いますので、皆さん待ちにまった金利上昇、インフレが始まるのかもしれません。とはいえそれで世の中が良くなる、とは必ずしも決まったわけではなく、スタグフレーションになってしまうのかもしれませんが。いずれにしても国の収支の不足分は国債で調達するしかないですし、それを順調に消化するには発行利率を引き上げなければならないでしょうから、金利の上昇は避けられず、金融機関の資産運用の舵取りは難しいことになります。   

もうひとつ、チュニジアの政権崩壊も思いがけないニュースです。あれよあれよという間に独裁政権が崩壊してしまい、周辺のイスラム諸国に飛び火して大変なようです。今はエジプトが大騒ぎですが、サウジアラビアまで飛び火すると大変です。イスラム国ではありませんが、北朝鮮もかなり神経質になっているんじゃないでしょうか。この冬はこれまでになく食糧事情が逼迫している、というニュースも流れています。

日本海側の大雪も、霧島山の大噴火も、また、鳥インフルエンザもあり、今年は波乱含み、なんてものではなく、波乱だらけの年明けになってしまいました

こんな中、まずは来月、生保各社の第三四半期の報告が発表されます。これにあわせて資本の増強も発表されることになるでしょう。他社の発表に先立って早くもライフネット生命は先週、第三四半期の報告を発表しています。

新契約件数、保有契約件数は順調に増加しているようですが、収支のほうはまだまだ大変なようです。事業費が大幅に増加しているのがチョット気になります。

うまく黒字に向かって戻ってこれるか、このまま赤字が続くのか、これからが勝負になります。とはいえまだ四半期報告ですから、3月末の正式な決算が出たところでよく見てみようと思います。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp