2010年 10月25日  inswatch Vol. 530

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【5】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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二重課税問題の所得税還付手続き始まる

いよいよ例の年金の二重課税問題の所得税還付の手続きが始まりました。とはいえ、20日に所得税法施行令を改正して公布、即日施行、それにあわせて具体的な解説も同日に発表し、保険会社から年金受取人宛ての通知はこれから、というのに20日の朝からテレビのニュースでは『今日から手続きが始まります』ですから、かなり混乱しているかもしれません。

この具体的な内容、とてつもなく複雑です。所得税法施行令の改正を見ても条文だけではとてもわかるものじゃありません。国税庁の説明資料についている『相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の計算書』という表を見ながら具体的な計算方法を確認しないと何をどう計算するのかよくわかりません。

今までのように式一行で書くなんてわけには行きません。

この表で一応年金の雑所得の金額は計算できるのですが、さすがに国税庁もその計算がなかなか大変だとわかっているようで、今週から国税庁のホームページに計算用のプログラムをのせて、必要なパラメータを入力すればこの計算書を作成してくれるようになるようです。もちろん、雑所得の金額が計算できたところで他の所得と合計して所得税の再計算をしなければなりませんから、なかなか面倒です。

今のところ過去5年分の平成17年から21年までの年金の還付請求だけを受け付ける、ということですから、さらにその前の平成12年までの年金の取り扱いについては所得税法の改正案が国会に提出されるのを待たなければなりません。

いずれにしても還付請求は所得税の確定申告か、既に行なった確定申告の更正の請求ということです。更正の請求であればまだいいですが、確定申告、ということになると、給与所得や公的年金の所得の源泉徴収票を集めたり、チョット手続きがめんどくさそうです。さらに、年金受取人が奥さんで、今回の雑所得の計算の変更で奥さんが配偶者控除の対象になるから旦那さんの所得税の申告をしなおす、なんていうのはなかなか厄介です。税理士さんは来年1月からの今年の所得の確定申告の仕事の前に今年いっぱいこの手続きで大忙しになるのかもしれません。

お客さんに質問されてもそれなりの説明ができるように、国税庁の発表の資料、目を通しておいたらいかがでしょう。 

『相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いが変更になりました』http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/topics/data/h22/sozoku_zoyo/index.htm

前回も書きましたが、金融の過払い利息の取り戻し請求で一部の弁護士や司法書士の荒稼ぎが問題になっていますが、今度の所得税還付でも同じように荒稼ぎする税理士の先生が登場するんでしょうか。また、振り込め詐欺にもご用心。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp