2009年 11月23日  inswatch Vol. 486

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【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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INGの保険部門分離・売却とその他の動向  

先月のinswatchの投稿直後、INGは保険部門の分離・売却を発表しました。INGはこの金融危機で公的資金の投入を受けているのですが、この返済に関連して保険・銀行にまたがる総合金融サービス、という事業形態を改め、保険部 門・資産運用部門の分離・売却を求められたものです。

INGは保険と銀行が合併してINGとなった当時はどちらかといえば保険のほうが中心となり、郵便貯金のポストバンクを買収したような形だったのですが、その後、いつのまにか銀行が中心のようになっており、今回の金融危機では銀行の方を残して保険事業を売却することになったようです。銀行事業の方も、東欧関係の投融資がどれだけいたんでいるのかわかりませんが、保険と銀行とどっちがいたんでないか、ということよりむしろ、女王様の『ゆうちょ銀行』(INGと合併する数年前まで日本の郵便貯金と同様、国営の銀行であったため、王室のシンボルであるライオンのマークがINGのマークとなっています。日本でいえば、菊の御紋章を会社のマークにしているようなものです)を売却することはではない、ということなのかな、と思います。

生保会社の9月の半期決算の開示が始まりました。
大所は今週25日あたりに開示する予定のようです。どのような結果になるでしょうか。

いずれにしても3月の本決算よりだいぶいい結果が出てくるものと思います。それでもやはり予想したように、増資その他の資本増強の話がちらほら出始めました。

半期決算の開示では新しい基準でのソルベンシーマージン比率の開示までは行かないかもしれませんが、計算自体は全ての保険会社がそれぞれ計算し、金融庁に報告することになっているものと思います。その結果によっては新しい基準も多少の修正が行なわれるのでしょうか。

マスコミは、民主党の新政権が際限もなく次々に話題を提供してくれて、大喜びなのでしょうか。『事業仕分け』という、中学校のクラス会のような議論を連日報道していますが、ここへ来てようやく、話題作りだけで何も実行することができないことが判りつつあるようです。

そんな中、金融担当大臣の亀井さんがしゃにむに進めた、中小企業の銀行借り入れに対する返済猶予・利払い猶予の法律案が民主党政権最初の法律として衆議院で強行採決されました。

銀行に対して返済猶予・利払い猶予の『努力義務』を法律にする、ということで、『努力義務』はどのように法律にするんだろう、と思っていたのですが、確かに『努力義務』がそのまま法律になっていました。

法律はその法律に違反することのないように、違反した場合の罰則規定というのが設けられているものですが、さすがに『努力』しなかったことに対して罰則を規定するのは難しかったようで、この法律の罰則規定は『努力』しなかったことに対する罰則ではなく、『努力』した状況を開示するという規定の違反に対する罰則だけが規定されています。『努力義務』そのものに対する違反の罰則については一般の監督行政の中で行なう、ということのようですから、これはもうトコトン裁量行政、ということになるのでしょうか。

この法律の対象は中小企業に融資したり住宅ローンを扱う『金融機関』ですが、その中には保険会社は入っていないようです。とはいえ、銀行が返済を猶予している会社に対して保険会社が借金を取り立ててつぶしてしまっては銀行もやってられないでしょうし、そんな企業に銀行が保険会社からの借金を肩代わりして追加融資する、というわけにも行かないでしょうから、保険会社も融資の返済や利払いを求めるわけにも行かないでしょう。実際、どんなことになるのでしょうか。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp