2009年 7月 27日  inswatch Vol. 469

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【5】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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変額年金の解約 

  いよいよ待ちに待った解散・総選挙ですね。麻生さんもいろいろ批判されていますが、やめなかった、ということで私は非常に高く評価しています。40日間の真夏の選挙活動、というのもかなり過酷なことですから、自民党としては最善の タイミングの解散かもしれません。

  というところで、6月が終わって、生保会社の6月末の四半期決算の状況が気になります。たぶん、ほとんどの会社は3月末よりはチョット状況が改善されたのではないか、と思いますが、去年は大和生命が6月末の決算を発表できずにそのまま破綻しましたので、実際発表されるまでは気が抜けません。今のところ、I NG生命が68億円の増資をした以外は増資等の公表はないようです。

  変額年金主体の会社は大変なことになっているようです。これまで何度か書きましたが、解約キャンペーンのシナリオもいよいよ現実的になってきているようです。

  たとえば、年金の据え置き期間が10年間で年金原資の元本保証型の変額年金の契約が、契約後5年たったところで特別勘定が7割に減ってしまっている、としま しょう。
   あと5年間じっと我慢すれば、元本が10割に戻る、とすれば、この5年間で4割増えることになります。 
   3割減ったのが元に戻るから3割増える、というのは間違いで、3割減ったものが元に戻るためには4割増えなければなりません。これは、1÷0.7=1.4286と計 算すればわかります。
   5年間で4割増える、というのは1年あたりに換算すれば、単純計算で年8%の利 回りです(複利でちゃんと計算すると7%くらいになります)。

  現在の低金利の状況で7%であれ8%であれ、とんでもない高利回りです。変額年金に入ってしまったときから今までを見ると、元本が3割も減ってしまった、ということですが、今から5年後までを考えればいつの間にかこんなに高利回りの金融商品を持っている、という風に考えることもできます。

  とはいえ、変額年金を売っていた保険会社が5年後まで破綻しないのか、という心配は残ります。ここで、もし仮に保険契約の売買が可能であるとすると、この高利回り商品をめぐって買い取り競争が始まり、心配性の契約者も特別勘定の損害のかなりの部分を回復した水準で既契約の売却が可能になるのかもしれません。今のところ、日本では保険契約の売買はできないことになっていますので、 これを実現するにはチョットいろいろ工夫しなければならないことになります。

  仮に年7%の利回りを売り手と買い手が折半したとしても、年3%台の利回りですから、かなりいい商売になりそうです。保険会社としては、契約の売買などしないで、普通に解約してくれればこれが一番ありがたい、ということになります。 銀行にとっては契約者が納得して解約してくれ、その損失を取り戻すために新規で投信を買うなり外貨預金なりしてくれればそれにこしたことはない、というこ とになります。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp