2009年 4月 27日  inswatch Vol. 456

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【5】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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生保各社の決算対策動向  

4月になってしまいました。  
3月末ぎりぎりになって、いくつかの会社が増資を発表しています。  
   住友生命の 1,000億円の永久劣後ローンの取り入れ  
   第一生命の 1,830億円の劣後ローン取り入れ
についてはすでに3月のこの稿に書きましたが、同じく書いた  
   T&Dホールディングスの約580億円の増資(全額太陽生命と大同生命の増資に充てられる予定) はそれを元に  
   太陽生命は 500億円の増資  
   大同生命は 700億円の増資 ということになりました。

これ以外に  
   オリックス生命は 150億円  
   クレディアグリコル生命は 35億円  
   フコクしんらい生命は 100億円
の増資を発表しました。

アリコジャパンは3月31日に294億円の持ち込み資本の増額を発表しました。
同じくAIGエジソンは3月31日に225億円の増資、AIGスターは3月31日に300億円の増資を発表しました。
とはいえ、この2社の増資は劣後ローンを資本金に振り替える形での増資ですので、新規資金が入ってきたわけではありません。 いずれにしてもかなり苦しい増資であるのは間違いありません。

なんといっても親会社がアメリカの公的資金で生き延びているわけですから、日本の事業の資本増強はかなり難しい、ということでしょう。

朝日生命は基金償却積立金の取り崩し、という禁じ手をしていますが、それとあいたいで実施する予定だった追加的な基金の取り入れの時期を延期することを発表しました。これも、当面簡単には追加基金の取入れができない、ということの表れです。

アクサ生命は4月に入ってからアクサフィナンシャル生命と合併することを発表しました。クレディスイス生命を買収し、アクサフィナンシャル生命と名前を変えて、銀行窓販専用会社とそれ以外の一般の生命保険販売会社とに役割分担のために事業・組織の組み換えをしていたはずですが、そのためにかけた費用をあきらめて改めて合併する、というのですから結果的に無駄な費用をかけたことになります。それでも両方の会社の生き残りのために合併を選択した、ということでしょう。

3月末の決算の中身は5月下旬に発表されることになります。どんなことになるのか、各社とも今頃は3月末決算の最終的なとりまとめで経理や数理のスタッフは大変だと思います。
   
決算というのはあらかじめ予定を立てて、ちゃんとまとまるように3月末までに十分な準備をしているはずですが、それでも4月にはいって実際に決算の数字をまとめている段階で思いもかけないような変動要素が出てくることがあるものです。余裕のある場合は、チョット計算が狂ってしまった、で済みますが、今のように余裕がないときに利益に対してマイナスの変更が出てくると場合によってはかなり苦しいやりくりが必要になったりします。とはいえ、4月に入ってしまっていては、できることにはかなりの制約があります。
   
各社とも、無事に3月末の決算を発表することができるでしょうか。

大和生命の破たん処理の更生計画案の要旨が発表されました。これで破たん処理がいよいよ開始されます。契約者保護機構は278億円の資金援助をすることになりますが、そのために保護機構が金融機関からその全額を借り入れるための入札の公告が保護機構のホームページに載っています。

生保会社の破綻のたびに話題になるのがソルベンシーマージン比率です。   
   この比率は実は、賞味期限が1年間ということになっています。即ち、決算後1年間に破綻しないかどうか、という指標です。もうひとつ、保険会社の財務の健全性の指標として、保険計理人の意見書、というものがあります。これは公表されないのであまり話題にならないのですが、賞味期限は5年ないし10年ということになっています。即ち、今後5年間あるいは10年間に保険会社がおかしくならないかどうかを保険会社の保険計理人が確認してその結果を会社の取締役会に報告し、金融庁にもその報告内容を知らせる、というものです。

たとえば大和生命の昨年の3月末(あるいはもっと前の年の3月末)の保険計理人の意見書にはどのようなことが書いてあったのか、書いてなかったのか、書いてあったとしたらそれを受けて会社の経営陣あるいは金融庁は何をしたのか、あ るいは何をしなかったのか、今のシステムが本当に賞味期限5年ないし10年になっているのかどうか、というあたりの見直しが必要ではないでしょうか。とはいえ、保険計理人の意見書は公表されないし、今となっては見直しの結果がすぐに何らかの結果につながるわけでもないでしょうが。  

少額短期保険業者の決算もいよいよ本格化します。金融庁への決算報告のための様式もようやくそれぞれの少額短期保険業者に送付され、来月末には各財務局に報告されることになります。こちらのほうも、どんな決算になるのか、気がか りです。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp