2009年 3月 23日  inswatch Vol. 451

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【3】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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年度末間際の生保決算状況を見る

いよいよ3月末まで、あと残すところ1週間。
引き続き生命保険会社の決算の話ですが、2009年に入ってから、増資等のニュースが急になくなってしまいました。
今のところ、   
   ・住友生命の 1,000億円の永久劣後ローンの取り入れ  
   ・T&Dホールディングスの約580億円の増資(全額太陽生命と大同生命の増資に充てられる予定)   
   ・第一生命の 1,830億円の劣後ローン取り入れの3つだけ公表されています。

これ以外の会社は資本増強の必要がないのでしょうか。あるいは増資することができないのでしょうか。

3月に入って株価がチョット回復し、為替も円安にふれているのでチョット安心してしまっているのかもしれませんが、まだまだどうなるかわかりません。あるいは3月末の決算に向けて金融機関が総がかりで株高、円安の相場作り、ムード作りに努めているのかもしれません。

いよいよとなったら、3月末ぎりぎりで増資したり、劣後ローンや再保険で何とかしのごうとしているのでしょうか。

金融危機も、当初のサブプライムローン危機はまだまだ解決していませんが、それだけでなく、焦点は次第に東ヨーロッパの経済危機に広がりつつあるようです。その結果、東ヨーロッパに積極的に投資している西ヨーロッパの金融機関の財務状況が大幅に悪化しており、それに伴って西ヨーロッパの金融機関に融資(あるいは債券投資)している日米の金融機関に影響が及びつつあるようです。

いつの間にかアフラックも心配な金融機関に仲間入りしてしまっています。アイエヌジーはもちろん積極的に東ヨーロッパに投資している西ヨーロッパの金融機関のひとつです。12月決算以降も目を離すことができません。

GM等自動車会社についても、破綻させるかどうか、3月末に結論が出る予定です。破綻したらもちろん、融資している金融機関は債権の回収不能でまたマイナスが広がります。株式市場にもマイナスの影響が出るでしょう。

AIGの幹部社員に対するボーナス支給問題で、AIGの先行きがまたまた不透明になっています。巨額な公的資金の投入を受け、そのうちかなりの部分を既 に他の金融機関に支払ってしまっていて、そのリストを出す出さないでもめたあと、今度はその公的資金の一部を幹部社員にもボーナスとして支払っていたことが判明しました。それも、今回のAIGの経営危機を引き起こした事業の幹部社員に対する支払いですから、アメリカ国民の怒りも理解できます。それにしてもボーナスを支払った後でそれを取り戻すために税制変更の法律を急遽作ってしまう、というのもアメリカらしい、なんでもありのやり方ですね。過去に約束してしまったボーナス支給を停止するために、中途半端に救済するのではなくとりあえず一旦破たん処理してしまったら、などというなんとも危なっかしい議論も出てきているようです。

日本のAIG系生保3社(アリコ、AIGエジソン、AIGスター)は12月末の状況はかなり厳しいものでした。3月末に向けて追加的な資本増強が必要な状況ではないか、と思われます。そのとき、実質アメリカの公的管理下に入ったAIGが、日本の保険契約者保護のために日本の生保会社の増資に応じるのか、アメリカの国民がそれを認めるのか、日本の保険契約者の保護は日本政府に負担を求めるべきだ、という議論が出てこないだろうか、と気になります。

大和生命は契約者保護機構が278億円資金援助する、という形で決着がついたようです。

AIGエジソンとAIGスターの買収のための入札が終わった、というニュースは出たはずですが、その結果についてはまだ公表されていないようです。 
なんとも落ち着かない年度末です。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp」