2008年 12月 29日  inswatch Vol. 439

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【3】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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生保で相次ぐ増資・基金増額  

今回も金融危機の話です。  
危機もいよいよ本物になってきましたね。
アメリカもついにゼロ金利政策を取ることになりました。日本が長く苦しめられたゼロ金利の底なし沼に、アメリカも踏み込んでしまったということで、今まで他人事のように見て色々コメントしていたアメリカの識者も、これから身をもってゼロ金利の難しさを味わうでしょう。ノーベル経済学賞のクルーグマンもやはり日本の先例が常に頭にあるようです。日本もお付き合いでまたゼロ金利に戻ってしまったので、これからしばらく金融のコントロールが難しくなりそうです。

「100年に一度の危機」と良く言われます。1929年の大恐慌があるじゃないか、と思っていたのですが、今の調子では本当にそれを上回る100年に一度の危機になってしまうのかも知れません。

自動車のビッグスリーもいよいよ破たん処理が本格的なシナリオに入ってきたようです。とりあえずつなぎ融資でお茶を濁しておいて、本格的な対処はオバマ新政権待ち、ということです。ビッグスリーを破綻させるにしても救済するにしても世論の非難は避けられそうもないので、ブッシュ政権としては時間稼ぎで逃げておいて、あとはオバマ新政権の責任、ということでしょう。いずれにしても、もはや金融危機という呼び方ではなく「経済危機」という方がぴったり来そうですね。

相変わらずマーケットは上下を繰り返していますが、先週末時点で

          日経平均  円ドルレート  円ユーロレート
2007年3月末    17,287円   117円    157円
2008年3月末    12,525円   100円    157円
2008年6月末    13,481円   106円    167円
2008年9月末    11,259円   106円    149円
今(2008年12月26日)8,739円    90円    126円

という状況です。このまま行くと、9月末の半期決算は何とかしのいだけれど12月末の決算を締めることのできない金融機関も出てきます。

生命保険会社では今次々と増資(あるいは基金の追加募集)の話が発表されています。ちょっとホームページをチェックしただけでも、

アイエヌジー      150億円    12月29日実施

朝日           350億円   12月25日実施

T&Dフィナンシャル    400億円   12月26日実施予定

マスミューチュアル 70〜120億円  11月21日決議

三井            600億円   12月29日実施予定

AIGエジソン        605億円   11月25日決議

オリックス         100億円   11月13日実施

第一生命フロンティア  650億円   12月12日実施

と目白押しです。

これ以外にもまだ私が見落としている会社があるかもしれません。新聞にも取上げられる大きな会社の場合も、新聞には取上げられないで単に会社のホームページで公表される小さな会社の場合も含めて、かなりの会社が増資あるいは基金 の増額をしています。朝日生命は基金償却積立金の取り崩し、などというウルトラC(というのはいかにも古臭い言い方ですね)というか禁じ手まで使って何とかこの危機を乗り切ろうとしているようです。増資や基金の増額が時間的に間に合わない場合は、劣後債の発行・劣後ローンの取入れも行なわれているのかも知れません。

あるいは再保険による資本増強もありえます。このあたりは決算の報告書が出ないと確認できません。 なんとも暗いニュースばかりになってしまいました。来年も、1月2月くらいはこのままの流れが続くのでしょうが、3月あたりから何とか明るい見通しが出てくるように期待したいと思います。

今年も1年、お世話になりました。
良いお年をお迎えください。        
(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)http://www.acalax.jp