2008年 3月 24日  inswatch Vol. 399

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【5】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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今国会で成立見通しの保険法案

保険法案が国会に提出されています。

本来なら所管官庁の法務省のホームページに公表されるはずなのですが、今のところそれがないので、衆議院の議案のページで見ることができます。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16905065.htm

3月5日に衆議院に議案が提出されたあと、今のところそのまま、ということのようです。何しろここの所、国会は道路特定財源、日銀総裁、サブプライムローンに起因する急激なドル安・円高でおおわらわのようですから。

今回の保険法の改正は、商法の一部として保険法が制定されて以来、それこそ 100年ぶりの初めての改正ですから、大幅な改正になっています。

今まで商法の一部として、カタカナで規定されていた条文が、今度は『保険法』という独立した法律として、ひらがなで規定されています(このあたりはこの前の会社法の改正と同様です)。

新しい保険法では、言葉の定義として保険契約、保険者、保険契約者、被保険者、保険金受取人が明確に定められています。 保険契約については「保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、」という形で、保険契約も共済契約も同じようにこの保険法で規定する、ということになっています。 現在の商法の規定では、保険契約は損害保険契約と生命保険契約の2種類だけ、ということになっていますが、今度の保険法では、損害保険契約、生命保険契約、傷害疾病定額保険契約の3種類、ということになっていて、さらに傷害疾病損害保険契約が損害保険契約の一種、という規定になっています。

これでいわゆる第3分野の保険契約に関する保険法の規定が整備されたことになります。 法律の書きぶりも、損害保険契約、生命保険契約、傷害疾病定額保険契約のそれぞれについて、必要な規定をそれぞれ条立てして規定しており(たとえば重大事由による解除の条文がそれぞれ別々の条になっている)、非常にわかりやすい法律になっています。

また、特別法が一般法に優先する原則、契約自由の原則により、民法より商法、商法より普通保険約款の規定が優先的に適用され、必ずしも商法の規定どおりに約款を書かなければならない、ということはないのですが、そうなるとどこまで契約内容を勝手に決めて良いか、ということが必ずしも明確ではありません。

今回の保険法では、ところどころに『強行規定』という条文があり、ここで規定する条文に反するような保険契約は無効とする、という形で勝手に変えてはいけない契約内容を明確にしています。 遺言による保険金受取人の変更の規定や、被保険者による解除請求の規定など、新しい規定もいくつか追加されています。

この法律が国会で成立すると、これにあわせて各社の約款が軒並み改定される、ということになり、保険会社の商品担当の社員は今からその作業に取り掛かっているでしょう。また、約款の印刷しなおしで、印刷屋さんは儲かるし、代理店は差し替え作業に振り回される、ということになります。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.acalax.jp