2008年 2月 25日 inswatch Vol. 395
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【5】保険ウオッチング 坂本 嘉輝
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ソルベンシーマージン比率に関する2つのパブコメ
ソルベンシーマージン比率に関連するパブリックコメントが2つ出ています。
1つ http://www.fsa.go.jp/news/19/hoken/20080207-2.html はこの3月末から適用されるものですが、興味のあるのは、ソルベンシーマージン比率の開示資料の中に、「第三分野の保険リスク」が独自の項目となって開示されること、および「責任準備金が解約返戻金を超過する額」が、「保険料積立金等のうち全期チルメル式責任準備金を超える額」として、独立の開示項目になったことです。
この後者の方は、従来ソルベンシーマージンの内訳で「その他」に入っていたのですが、実際はソルベンシーマージンの中で最大の占率の項目だったものです。
今では全社計で見れば、有価証券の含み益がソルベンシーマージンの半分くらいを占め、この「責任準備金が解約返戻金を超過する額」は全体の14%を占めるものですが、それでも2番目に大きい項目です。有価証券の含み益がここまで戻る前はこれが最大の項目で、それが「その他」として開示されていたわけです。
またこのパブリックコメントで監督指針が改正され、「資産負債の総合的な管理」が、そのための部門を設置して、収益部門から独立して機能するように態勢整備が求められることになるようです。
もう一つのパブリックコメントは、もっと根本的にソルベンシーマージン比率の計算方法あるいは各種係数を見直そうというもので、これは5月30日の締切ですから来年以降の決算に適用されるということになります。
http://www.fsa.go.jp/news/19/hoken/20080207-1.html
これはソルベンシーマージンの方は固めに(小さめに)評価し、リスクの方は従来よりもっときめ細かく、また安全率を高めに(信頼水準を90%から95%に引上げて)設定してリスクを多目に評価するように変更しようとしているようです。
これにより計算の手間は大幅に増えますし、またソルベンシーマージン比率の数値自体従来の方式と比べてかなり小さくなるものと思います。 言い換えれば、保険会社の体力がそれだけ回復し、従来よりきつめのソルベンシーマージン比率の計算にも対応できる(耐えられる)ようになったということになります。
付録として全社ベースのソルベンシーマージン比率計算のためのソルベンシーマージン、リスクの各項目の額も出ていますので、興味のある方は一度見てみると面白いかも知れません。
(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) http://www.acalax.jp