2008年 1月 21日  inswatch Vol. 390

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【2】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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逓増定期保険の保険料の損金の取扱についての改正案

昨年末、国税庁は、逓増定期保険の保険料の損金の取扱について、改正案をまとめ、パブリックコメントの手続きに入っています(締切は1月31日)。 >
 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?OBJCD=100410 >
  http://search.egov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1030&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000033080

逓増定期保険は中小企業の損金扱できる貯蓄性商品として広く活用されてきました。

商品の貯蓄性と保険料の損金扱という矛盾する商品性から、これまでも何度か保険料の損金扱については税制上のルール変更が行なわれ、その度に逓増定期の存続が危ぶまれましたが、現実には新しいルールに対応して商品改定が行なわれ、復活して生き残るということで今日に至っています。

今回の税制ルール変更は、昨年の3月に国税庁がその検討を開始するというニュースとともに、今度こそは逓増定期保険の存続は難しいのではないかとの観測から、逓増定期保険を取扱っている殆どの保険会社がその取扱いを停止しました。

3月は多くの企業の決算月であり、節税型の逓増定期の販売量も3月が飛びぬけて多くなっています。そのさ中での販売停止で、営業の現場はかなり混乱しました。

逓増定期保険に入れないために十分な節税ができず、税金を払った会社、3月の逓増定期保険の販売のために何ヵ月も前から準備を進めていたのに営業停止で募集手数料が得られなかった代理店、急な変更の説明のためにお客さんや代理店へ説明に飛び回った保険会社の営業社員等々、大変でした。   

今回のルール変更案は、当初見込まれていたものと比べるとかなり緩やかなものとなっています。保険料全額損金扱いの範囲は実質的にほとんどなくなってしまいましたが、1/2損金であればまだまだ利用価値がありそうです。1/2養老が使えない会社などでは便利かもしれません。このルールが確定し次第、逓増定期の販売を再開する保険会社も多いかも知れません。

また税制のルール変更では、過去に加入済みの契約の取扱をどうするか、ということが常に問題となります。今回の変更(案)では、既に加入済の契約については「これまでの損金ルールをそのまま適用する」ということになっています。

それを踏まえ、それだったらルール変更が確定する前の駆け込み販売をしようという動きも営業の現場では出ています。

さらに、加入済みの契約の取扱いが変わらないんだったら、昨年の3月の突然の販売停止は何だったのか(そのまま売り続けても問題なかったじゃないか、節税できないために余分に払った税金を返してくれ、販売できないために失った募集手数料を払ってくれ)、という問題も起こりそうです(もちろん、保険会社が責任を取ることはないでしょうが)。

保険業界では郵貯/簡保の民営化・銀行窓販の全面解禁という大きな変化があり、郵便局でも生損保会社の商品が販売できるようになっています。逓増定期保険の実質的な開発会社であり、この分野で常にリーダー格の存在であったING生命も、かんぽ生命への商品供給会社のうちの一社となっています。ING生命は昨年3月以降も逓増定期保険の販売を停止していない数少ない会社のひとつです。郵便局で逓増定期保険が買えることになるのでしょうか。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) >  
http://www.acalax.jp