2007年 12月 17日 inswatch Vol. 385
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【2】保険ウオッチング 坂本 嘉輝
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「第一生命の株式会社化」報道
第一生命の株式会社化のニュースが大きく取上げられています。「大手生保が相互会社から株式会社に変わるのは初めて」という報道になっています。
以前は大手6社とか8社とか言って三井生命も大手だったのですが、今では大手会社とは見做されていないようです。
マスコミ各誌は株式会社化を詳しく伝えていますが、第一生命自体は今の所否定しています。
http://www.dai-ichi-life.co.jp/information/pdf/info_071206.pdf
株式会社化は検討はするけれど決まった話ではないということのようです。
とはいえ、通常はリリースには日付や会社名が入っているはずですが、日付・会社名なしの文章のみがホームページに載っているというのは、何か奇異な感じがします(その後日付だけは追加されたようです)。
第一生命は創業者の矢野恒太さんが相互会社理念にもとづいて(燃えて)作った会社で、生命保険会社は相互会社という組織形態が最も適している、第一生命はその理想的な相互会社を実現していると(現実はともあれ)自負し自慢していた会社です。その会社が相互会社をやめて株式会社になるというのですから、今までの自慢は一体何だったのということにもなり兼ねません。
日本の相互会社は基本的に有配当の契約を販売しており、とはいえバブル崩壊後今までほとんどあってないような契約者配当だったのが、ここへ来て収益も安定し、ようやくまともな配当ができるようになりつつあるまさにその時、大変なお金をかけて株式会社化するというのは、契約者の理解を得ることができるのでしょうか。
生保会社が逆ざやで苦労していた頃、株式会社化して市場から資本を調達し、経営を立て直そうという議論がありました。相互会社にとって、外部資本を取り入れて財務の健全化をはかるには、それしか方法がないからということです。それはそれで十分理屈に合っています。
今は経営も安定しつつあり、急いで資本を調達しなくても支障はないように思えます。そんな時の株式会社化の議論です。株式会社化より前にきちんと保険金を払えとか、契約者配当を元の水準(以前は利益の90%以上というルールだったのを80%以上と変更し、そのう声が出て来てもおかしくありません。
今となっては収支も安定し、毎年の収益で自己資本を増強することがようやく 可能になったわけです。にもかかわらず株式会社化するということであれば、このあたりの十分な説明を聞きたいものです。
(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) >
http://www.acalax.jp