2007年 7月 23日  inswatch Vol. 364

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【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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少額短期保険業2社の決算に見る開始時のハードルの高さ

保険会社の決算が発表され、業界紙、一般紙でも業績比較の記事が掲載されています。生命保険会社の場合は生命保険協会のホームページから、
     http://www.seiho.or.jp/data/account/index.html
のページで各社の決算の内容を見ることができます。

損害保険会社の場合はこのような便利な仕組みがないので損保協会のホームページから
    http://www.sonpo.or.jp/link/
各社のホームページに行って、それぞれの会社の決算発表資料を見ることになります。

昨年4月の保険業法の改正でスタートした少額短期保険業者も決算を発表しています。 現在、少額短期保険業者の登録を済ませている会社は日本震災パートナーズ株式会社、ペット&ファミリー少額短期保険株式会社、エクセルエイド少額短期保険株式会社の3社ですが、3月末では初めの2社だけでしたので、この2社が決算を発表しています。

  日本震災パートナーズ株式会社
       http://jishin.co.jp/company/pdf/settlement070331.pdf

  ペット&ファミリー少額短期保険株式会社
       http://www.petfamilyins.co.jp/BS_PL.pdf

事業を始めたばかりの保険会社の決算を見るのに、まず見たいのは単年度利益、次に収入保険料、次に事業費、ということになります。

日本震災パートナーズ株式会社は資本金(+資本準備金)1,156百万円に対して単年度損失が396百万円、営業開始からまだ半年もたっていないので損失は仕方ないとしても事業費が331百万円、収入保険料は正味収入保険料でマイナス47百万円、即ち受け取った元受保険料より支払った再保険料のほうが47百万円多かった、という不思議な決算です。このあたり、少なくとも元受保険料収入の額くらいの情報はほしいところです。

ペット&ファミリー少額短期保険株式会社は営業開始が今年の4月ですから、決算は営業開始前の決算、収入保険料のない決算です。とはいえ単年度損失が167百万円、事業費は75百万円です。資本金(+資本準備金)は1,606百万円です。

どちらの会社も今期から本格的な営業が始まりますから、それに伴い事業費も大幅に増加することになると思います。 どちらの会社も最初からかなりの規模の全国展開の保険会社を目指しているようですから、必ずしもすべての少額短期保険会社に当てはまるわけではありませんが、最低資本金の1千万円があれば少額短期保険会社ができる、と思っている人には参考になる結果だと思います

即ち、少額短期保険会社として事業を行うには少なくとも数千万円から億円単位の事業費が必要になり、それでも収益を確保できるような収支構造が必要だ、ということになります。

やはり、保険事業というのは始めるのにかなりハードルの高い事業です。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.acalax.jp