2007年 6月 25日  inswatch Vol. 360

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【5】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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年金の保険料納付データの問題

年金の保険料納付データの問題が大変ですね。5,000万件の宙ぶらりんのデータの存在から始まって、データの信頼性が大いに揺らいでいます。この、5,000万件のデータですが、何をもって1件とするのかがわからないとその実際の影響の大きさがわかりません。

結論から言うと、5,000万件というのは、5,000万人分のデータ、あるいは年金手帳5,000万冊分のデータ、ということのようです。日本の人口が1億2,000万人くらいですから、この5,000万人分というのがどれくらい大きな数かがわかります。

とはいえ、一人で何冊もの年金手帳を持っていることもあり、またすでに死亡してしまった人の分もあるので国民年金・厚生年金の全体ではこの5,000万人分のデータを含めて全体で3億人分のデータが存在するようです。3億人分の5,000万人であっても大した比率です。もちろんこのすべてを1年以内にきちんと整理し終わるのは現実的に不可能でしょう。

政府はこの問題に関して年金記録問題検証委員会というものを開催していますが、その1回目の会議資料を見るとこのあたりがよくわかります。
   http://www.soumu.go.jp/hyouka/nenkinmondai-1901.html

その昔、手処理の紙ベースの事務処理では問題なく処理されていたことが、事務の機械化に伴ってきちんとできなくなり、それが長年にわたって放置され、またデータ処理の効率化のためのデータ変換に伴ってさらに不正確なデータを拡大し続けた経緯がわかります。

ようやくしばらくしたら始まるようですが、保険料納付記録をそのつど確認する、という当たり前のことをしなかった、というのが根本的な問題だと思います。

これは何も特別なことではなく、たとえば銀行は預金の入出金のたびに残高を通帳に記載して確認できるようにしているし、保険会社は毎年保険料の払い込み状況を契約者に通知して確認してもらっている、これと同程度の確認作業さえしていればこれほどの問題にはならなかったはずのことです。

国民年金の場合は保険料の納付は気をつけていれば自分で記録を保存できます。厚生年金のほうは自分の給与から保険料を天引きされた記録をとっていたとしても、仮に会社がその保険料を国に収めていなかったとしたら、年金の記録としては保険料が納付されていない、ということにしかなりません。

問題がここまで大きくなっているのですから、この際、基本に立ち戻って、ごく当たり前の本人による保険料納付の確認ができる体制作りから始めたらいいのではないでしょうか。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.acalax.jp