2007年 5月 28日  inswatch Vol. 356

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【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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ニッセイ、住生の責任準備金積み増しの意味合い

日本生命・住友生命が逆ざや解消のために責任準備金を積増すと言っているようです。新聞の報道は概ね好評で、財務体質改善のための良い戦略だということのようです。   

今のところ日本生命・住友生命のホームページにはこれに関する具体的な説明がないので、実際何が行なわれて、その結果どうなるのか良くわかりませんが、ごく普通に考えても両手を挙げて賛成するようなことではないように思います。

このような動きが出てきたということは、生保各社概ね決算が好調で(今後については保険金の不払い問題がどの程度の悪影響を及ぼすか、判断は難しいですが)、収益にもゆとりが出てきたということでしょう。また国際会計基準の導入で、資産の時価評価だけでなく負債も時価評価を求められるようになる、その動きを前取りした準備作業なのかも知れません。

しかし単純に考えれば、責任準備金を積増すということは、その分会社の利益が少なくなります。日本生命や住友生命などの配当付の保険を売っている会社の場合は、その分契約者配当にまわす財源が減ってしまうということです。

決算が好調で、各社とも配当を増やす予定のようで、契約者にとっては今まで有配当といいながら殆ど有名無実だった配当をようやく楽しめるようになりつつあるところですが、この積み立て準備金の積増しというのは、そのお楽しみも一部だけにしておいて、残りを将来の一層のお楽しみのためにもうしばらく保険会社内に留保しておくということになります。その分将来の配当を増やすことができるかもしれませんが、その前に契約を解約してしまえばそれも手に入れることはできません。

ここの所、生命保険会社の利益をどのように測定し、それをどのタイミングで契約者に還元するかというのは、アクチュアリーにとっても永遠のテーマです。

この機会に生命保険会社にとって利益とは何か、契約者配当とは何か、考えてみるのも面白いかも知れません

理屈っぽい議論が好きな方には、私の管理しているホームページをお勧めします。この掲示板ではアクチュアリー(とおぼしき人)に、そうでない(と思われる)人も含めて、この掲示板としては久しぶりに盛り上がっています。   
 http://cgi.linkclub.or.jp/~lax/bbs/wforum.cgi?mode=all_read&no=1571&page

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役)
http://www.acalax.jp