2007年 4月 23日  inswatch Vol. 351

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【4】保険ウオッチング                    坂本 嘉輝

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今回の生保不払い問題の特異性

生保の保険金不払いが発表されました。各社、それぞれ金融庁への報告とホームページ等への掲載によりいわゆる不払いの件数・金額を公表していますが、基本的にはまだ調査中、ということで、今後ともこの問題は決着がつくまでかなり長引きそうです。

一般紙等のマスコミの論調は単純に不払いはけしからん、というもので、生保会社のほうもひたすらスミマセン、と頭を下げて、いずれにしてもほとぼりが冷めてしまえばそれまで、といういつもの姿です。

保険会社に調査と報告を命じた金融庁は今の所、正式に何もコメントを発表していないようです。調査中、の調査が進行し、不払いの件数が何倍かに増えるのを待って何らかの処分をするのでしょうか。

今回の不払いは従来のまっとうな不払い(というか、本来的な意味での不払い)と異なり、言うなれば保険金支払の努力不足、という意味合いのものですので、一般紙等のマスコミの一方的なケシカラン論はかえって問題の本質を判りにくくしてしまうことになるのではないでしょうか。

本来的な不払い、というのは保険金の請求があり、約款に基づいて当然支払わなければならないものに対して、約款の規定によらない免責や不担保、告知義務違反等を言い立てて保険金の支払を拒否したり、保険金支払請求をやめさせたりするものです。これは約款違反、約款に基づく契約の債務不履行、詐欺、ということですから当然厳罰に処すべきものです。

今回の生保会社の不払いはこれと異なり、保険金等の支払請求を契約者や保険金受取人に積極的に促さなかった、というものです。たとえば、死亡保険金の請求書に死亡診断書がついていますが、その診断書に入院や手術があったと思われるような記述があったら、保険会社の方から保険金受取人に入院給付金や手術給付金の支払請求を促すべきだった、とか、入院給付金の請求があったら入院の前後に通院がなかったかどうか確認してその給付金の請求を促すべきだった、というようなものです。

ですから、事柄の性格がまるで違います。生保会社も表面的には平身低頭の姿勢ですが、必ずしも納得しているわけではないでしょう。

今後、このような不払いが起こらないよう、組織を変えるとかシステムを整備するとか、いろいろな対応策が発表されています。いかにも契約者のための至れり尽せりの体制作りですが、それが本当に契約者のためになるのでしょうか。

契約者が自分の契約について十分に認識せず、保険会社任せになってしまって、保険会社は至れり尽せりのサービスを提供するためにまたまた多くの経費をかけて、もちろんその経費は契約者が負担することになる、それが本当の契約者保護になるのかどうか。

契約者自身が加入している保険契約の内容をしっかり理解し、また、必要に応じて取り扱った代理店が適切なアドバイスをする、という方がよほど効率的なように思いますが、どうでしょう。

(生命保険アクチュアリー、(株)アカラックス代表取締役) >  
http://www.acalax.jp